「ミリアが居なくなった?」(3P)
(――――は。阿保らしい……)
行きついた先は、猛烈な呆れの境地であった。
確かにこの世界には魔法も病も存在する。それらが人の暮らしに密接に関わっていることも理解しているが、現実的にあり得ない。
(こいつは本気でそんなことを言っているのか? 人間が石になるわけがないだろう、何のつもりでそんな出鱈目をほざいているんだ? 俺を騙そうとでもしているのか?)
――心底。心の底から。
思いっきり呆れを吐き出す。
いまだに、ぴぇぴぇ煩いピィだが、彼女には以前混乱させられているのだ。
もう二度と同じ轍は踏まない。
その手に引っかかってなるものか。
と、固く心の扉を閉ざし、エリックは煩いピィに一瞥をくれると、ガタンと音を立てて椅子を引き、
「――虚言に付き合う義理は無い。ミリアが来るまで待たせてもらうぞ」
「――――おや。まさかソレを、虚言だと一蹴するのですか? ボス」
「……スネーク……!」
言い放った直後。
突如響いたその声に顔を上げる。
聞き間違うはずもない。
『余裕とイラつく思わせぶり』を含んだその声は、瞬時にエリックの機嫌を警戒にまで引き上げる。
現れたのは、もちろん――
常時装備のにこやか笑顔は詐欺師のソレ。
オリーブグリーンの髪も胡散臭く、崩れぬ糸目が挑戦的な「商工会ギルド長・スネーク・ケラー」。
エリックの部下であり――優秀な天敵である。
#エルミリ




