エリックの手記①
今日、ミリアの料理を食べた。
屋敷の食事の一部だけのような簡素なものだったが、彼女は俺の体調を気にかけてくれたのだろう。優しい味わいのスープはとても美味かった。
特筆すべきはプリンだ。
彼女から話は聞いていたが、本物を見るのは初めてだった。食べてみたいと思っていたんだ。クリームともチーズとも違う乳製品、プリン。目の前に現れた時俺は、きっと幼い子供のように目を見開いていただろう。
味は……美味かった。
スプーンを刺した瞬間のあの弾力。ぷるぷると揺れる見た目はそれだけで見るものを楽しませ、広がる甘い香りは人を期待させる。口に入れた瞬間、味わったことのない心地いい感触が舌を魅了し、甘さと苦さが喉の奥に滑り落ちていく。
幸せがそこにあった。
甘い部分と苦いソースの塩梅が絶妙で、冷たく滑らかな口当たりはまさに至福。このような食べ物がこの世界に存在しているなんて、俺は今日この日まで知らなかった。
そんな俺を見て彼女は「顔がとろけてる」と言っていたが、仕方ないだろうと言い訳していた。
こんな幸せな食べ物は他にない。今まで食べてきたどのスイーツよりも、美味かったんだ。
彼女にレシピを貰った。作り方はシンプルなようだが、加熱時間などが難しそうだ。ミリアもそこが難しいと言っていた。料理人に作らせてもいいが、あの柔らかさに懸念を抱き再加熱してしまう可能性もある。それでは駄目なんだ。プリンはあの食感でないとプリンではない。
俺が作るべきだろうか?いや、しかし調理場に入ると料理人たちが驚いてしまう。その上、畏縮されかねない。難しい。しかしどうにかしてもう一度味わいたい。
ああ、もう一度食べたい。虜になってしまった。
ミリア。もう一度あのプリンを作ってくれないか。
依頼したら作ってくれるだろうか?
あの味が忘れられない。今夜は眠れそうもない。




