表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

471/592

──────息を潜めて闇に溶ける。


 




 辺りに気を配りながら。

 神経を研ぎ澄ませ土を踏む。

 

 ノースブルク諸侯同盟・オリオン領西の端。

 ウエストエッジのさらに端。

 


 橋のかからぬ堀の前、ミリアは対岸の森を見据え、金色の瞳に決意を乗せ佇んでいた。




 目深に羽織った漆黒のローブは、闇に溶け込む自衛策。

 足元まですっぽりと身を隠し、引き摺る裾を気もせず。

 街と外を隔てる水路を前にして、彼女は風を纏い大地を蹴った。



 ふわりとした浮遊感。

 足元を流れる水路を軽々超えて、向こう岸へ。

 すとんと小さく大地を鳴らして、振り向き見つめるのは──堀の向こうの街の塀。





「…………」




 脳の真ん中でエリックが語る。

 『外に出るなよ?』。



「────まあ、気持ちはありがたいのですが」

 軽い口調で言いながら、瞳に宿した陰りを流す。




「心配は……理解できるのですけれども」 


 言葉を濁して、指で押さえるのはネックレス。

 チク、チクと刺さる痛みを堪えながら、彼女は言い訳めいた口調で言った。




「────わたし、「魔法使い」。

 だから、ここにいるためには、そうも言っていられないの」

 


 行かなければならない。

 闇が広がる森の奥へ。

 やらなければならない。

 自分がここで、暮らしていくために。



 ──『街の外に出るなよ?』 


 

 頭の中で言い聞かせてくるエリックから逃げるように、ミリアは闇を見つめて繰り返した。




「──大人しくしてて。

 解ってる、解ってる。

 ちゃんとするから、痛いのやめて、大人しくしてて……!」




 ミリアの誰にともなく零れた声は姿と共に、木々の闇に吸われ消えてゆく。













 何事にも 表があれば裏がある。





※chapter7 END


※chapter8 11 Start

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ