7-22 「キミの気持ち」(7P)
「────ずっと、こんなのが続けばいいよね」
「──ん? こうしていたい、じゃなく?」
「ふへへ。
ここで暮らしていけたら幸せだなって思ったのが、漏れた。
ぽろっとした。」
「なんだよ、暮らしていけばいいだろ? ノースブルク諸侯同盟国は、君を歓迎するよ。出て行けなんて誰も言わない」
「──────ん」
軽く笑って首を振るエリックに、ミリアは視線を逃がして相槌を入れた。
口元は笑みをかたどったまま。
奥底にたゆたう懸念から目を反らすように、ぱっと顔を上げ、言う。
「────ねえ、そうだ。
昨日、起きたら食べようと思って、作っておいたんだけど、食べる?」
「────? これ以上?
いや、スープにパンに、腹がいっぱいで」
「そ? プリンあるけど、いらない感じか〜」
「────食べる」
困惑の顔から一転。
くるりと意見を翻し、真面目な顔で述べた彼に、ミリアはくすりと笑ったのであった。
重ねていくのはなんだろう。
時間か、努力か、研鑽か。
信頼か、友情か、理解か。
本音か、嘘か、偽りか。
始まりは『利害の一致』に見せかけた取引。
言葉を 時間を 気持ちを重ね、彼女は穏やかな日々の続きを願った。
────これは、 の話
息を潜めて闇に溶ける。




