7-22 「キミの気持ち」(5P)
「元を正せば、俺があいつに嚙みついたのが原因だが、しかしあの時どうしてああなったのか、自分でもいまだによくわからなくてな。
……俺なりに『その原因がどこにあるのか』考えるから、少し時間をくれないか?」
「まじめ」
「真面目だよ、真剣だ。同じことを繰り返して君を怖がらせたくないし、原因さえわかれば対処できるようになるだろ? 無駄にイラつくこともない、その方が建設的だ」
「……うぅん……
『こころ』とか『かんかく』に、そこまでするひとも珍しーなあ……と思うけど……まあ、うん、そーだね~」
まるで軍法会議の真剣さで述べる彼に、ミリアはこりこりと頬を掻きながら答えた。
心の隅で(だから《固い》って言われるのでは……?)と首を捻る。そこが良さだと言われればそうかもしれないが──
(……心って、自分でもよくわかんないのに。『人に迷惑かけないように探求するから』なんて、ほんと『まじめ』)
『感情に振り回される』なんて珍しいことじゃない。
のに、『原因を探ってみるから』なんて聞いたこともない。
(──でも、だから、この人のこと信頼できるんだと思う。わたし。わたしならテキトーにしちゃうところを、ちゃんと向き合うんだ。この人)
そう。そこがいいところだ。
朝の光差し込むリビングルーム。
小さなダイニングテーブルを挟んで、口には出さぬ信頼が、心の中で形になっていく。
(自分に向き合うって、怖いことなのに。この人、それができる人)
──────くすっ……
「……ねえ、ごはん、美味しかった?」
「え? ああ、美味かったよ。皿が空だろ? どうした突然」
笑いを交えて、問いかけた瞬間。
先ほどまでの小難しい顔を、ぱっと消し去り、目を丸めて笑う彼。
途端・変わり流れる『いつもの空気』。
それらを感じ取りながら────ミリアは、ほほ笑みと共に、ひとつ、こぼした。




