7-22 「キミの気持ち」(2P)
「先ほども述べた通り、俺は、他者に弱みを晒すようなことはしてこなかった。甘えた記憶もない。だから今、君の言葉に抵抗も感じているし、戸惑いもある。
だけどこれは今に始まったことじゃなく、君と出会ってから何度も味わった感覚で……素直に感情をぶつけてくる君が信じられないと感じることもあるし、言い分に腹を立てることもある。
自分のペースが乱されて、自分が自分でないように感じるときもある。
乱された感情に苦しむこともある。
────けれど」
”一拍”。
彼の言葉を待つ。
途中、否定めいたことも混ざる言い分だったが、ミリアの心はざわつかなかった。語る彼の口調は非常になめらかで、優しさを帯びていて、安心して聞いていられたからだ。
その表情に、慈しみの笑みを浮かべつつ、視線を惑わせた彼は──光を帯びた瞳で語り出す。
「その後には、必ず穏やかな気持ちが待っているんだ。
何かが解けるような、光が差し込むような、晴れたような。
君の言う『言い合う』が、俺にそれを齎しているのかはわからないけど、おかげさまで、前より少し、日々に厚みを感じるというか……満たされていると感じる。
それも、とても不思議で仕方ないことなんだけど。
──『心地いい変化の中にいる』……、そんな感じ」
云う彼は気恥ずかしそうに頬を掻いていた。
その様子はどう見ても『顔の動かない男』には映らず、ミリアはただ、目の前の彼を瞳に映して言葉を待った。




