7-22「言いたいこと、ある」(8P)
迷い、悩みながらも伝えようとするミリアに、出た声は落ち着きを纏っていた。
ミリアの言いたいことはわかった。
ここまで言葉を重ねてもらって理解できないほど馬鹿じゃない。
正確に伝えようと努めているのがよくわかる。
────『そこまで伝えてくれようとしているのなら』。
それを反故にするわけにはいかないだろう。
そんな思いは、素直に言葉となって外に出た。
「……正直、戸惑っているけどね。
こんなふうに、思いのまま言葉をくれる人間も、今までいなかったから。『恐る恐る扉を開けて、声をかけるような』……さ。
……そこまでされたら、『大丈夫だよ』と声をかけたくなるんだけど、それは天然でやっているのか?」
「最大の配慮、です。天然と言われると困る。計算ではない。それは確実」
「…………末恐ろしいな、危なっかしいというか」
(──その素直さが仇になりそうでひやひやする)、その一言は胸の中。エリックは話の焦点を戻し、言葉を繋いだ。
「────しかし、君の言葉はもっともだ。
怒りについて抑え込んでいたのは、わざとそう務めていたからな。否定のしようがない。しかし」
それはそれとして。
と傍に置き、続きを紡いだ。
「君の『受けて立つ』については飲み込めない。君を感情の掃き溜めにするようなこと、俺にはできない」
「────そこまでしないでしょ、おにーさん」
抵抗に抵抗を重ねて放った言葉に、返ってきたのは信頼だった。
迷いを晴らす一言。
場を貫く一閃に、鼓動がドクンと跳ね上がる視界の中で、ミリアは言う。
「ちゃんとこっちのこと見てくれてる。
振りかざしたりしないよ、理由なく怒ったりしないもの。
もうたくさん話してるし、信頼してる。
だから、心が割れる前に、聞かせてほしいの。
相棒だもん」
「…………」
「言えること、言えないこと、あるだろうから。
無理にとは言わないよ、でも、ね?
キミが割れる前に聞かせてほしい。
『言わなきゃわかんない』、これ大事でしょ?」
「………………そう、だな……」
こぼれた声は感慨に満ちていた。
心地よく音を立てる鼓動。
いつの間にか握りしめていた手の温度が暖かい。
窓から差し込む光が、未来を感じさせる中。
──”ひとつ”。
彼はゆっくりと顔を上げ、深く青い瞳に光を乗せて。
「……ミリア……君に聞いてほしいんだけど」
勇気を出して。
「少し、俺の話を聞いてくれる?」




