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7-22 「言いたいこと、ある」(2P)


 

「あの時おにーさん、『口論したことない』って言ってたでしょ? まあ、大人になるとそういうの、避けるようになるのはよくわかるんだけど、『なんで?』って思って。

 したらいいのに、口論。

 我慢し続けることないよ」

「…………」



 エリックは黙り込んだ。


 『君と違う』と言葉が過るが、それは頭の隅に追いやり視線を落とす。


 『我慢することない』と言われても、自分は盟主の息子として、武器商人の子として常に羨望(せんぼう)憐憫(れんびん)・悪意に晒されて生きてきた。


 それらに対し、まともに取り合うことは、相手に餌を与えるようなものだ。いくら腹立たしかろうが、奥底に封じるのが最良であった。


 ────しかし、それを盾に悲観するつもりも、怒るつもりも、感情的に言い返すつもりもない。『現実だと受け止め、ただ全うするだけ』。



 ……テーブルの上、緩やかに置いた右手に力を入れた拳を一瞥(いちべつ)すると。彼は静かに息を吸い込み、落ち着き払った眼差しで語る。




「…………”するべきではなかった”から。

 声を張り上げて怒鳴るなんて、大人の……いや、女神の加護にある人間のすることじゃない」


「宗教観はわかんないけどさ〜……それにしちゃあこの国、怒鳴ったり乱暴したりする人結構いるよ?」

「────それは、」

「……ごめん、おにーさんに言っても仕方ないこと言った。

 そんな顔しないでよ、おにーさんが悪いわけじゃないんだし」




 瞬時に宿してしまった『戸惑いをはらんだ怪訝』に、ミリアの言葉が返ってくる。その顔は少々困っており、エリックは無意識に息を呑んだ。



 困惑顔に言葉が出ない。

 人の顔色を窺い黙り込むのとは違う。

 なぜか出てくる罪悪感に眉が下がる。

 


 ──そして、なぜ自分がそう感じているのかわからない──

 そんな戸惑いに、返す言葉を探す中。ミリアはテーブルの上、空いた皿を隅に避けつつ目を向けると、



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