7-21「信用してない」(8P)
「────いや……
君の温情をありがたく受け取っておくよ……
情けないが、ぐうの音も出ない。
何も言えない。すまなかった」
長いようで短い沈黙の後。
沈痛を纏わせ息を押し出すように、額を押さえて吐き出した。
正直、少し前の自分の頭を叩きに行きたい気分だが、時間は戻らない。もし仮に、自分がミリアの立場なら、これだけではなく、小一時間小言を浴びせまくっていた自覚がある。
激痛は激痛だが──
(確かにもっと酷い言葉を浴びせられてもおかしくない)と受け止めるエリックは、徐々に冷静さを取り戻しつつあった。
すべての反省をうちに秘めて。
空の皿を見つめながら、彼は……言葉を紡いだ。
「ヘンリーと、その連れについては、後で礼に行くよ。
確かにあいつは、俺に気をかけてくれていた。
俺はそれを、気がつかないふりをして突っぱねていたんだ。
それが……あいつにそのような思いをさせていることに気づかなかった。
君の言葉が……痛かった」
──と、ひとつ。
目の前で聞くミリアの眉が、少し、バツの悪そうに下がる。
「────しかし、それは、俺にとって必要な痛みなのだと感じている。立場上、俺にそれを諭してくれる相手は居なかったが、確かにそうだ。
先を見据えるのなら、このままでは駄目だ。大切な縁を失ってしまう」
──責務だ・なんだと決めつけて。
意固地に気持ちを袖にしていた。
「…………今まで、どうにも気が進まないし、抵抗しかなかったが、それではいつか、相手の気持ちが折れてしまう……」
────ああ、バカだった。
少し考えれば、わかることだったのに。
(────俺も、まだまだ未熟だな)
心の奥底に落ちていく、痛みを伴う暖かさを噛みしめながら
エリックは、ミリアに瞳を顔を向け、はにかみ、述べる。
「────ありがとう、ミリア。
あいつの気持ちを伝えてくれて、感謝する。
こんな食事までもらって、なんと言葉にしていいか」
「────あのさ」
安穏に落ちゆく心を、堰き止めるように。
穏やかな雰囲気を、貫くように。
ミリアの一声が場を縮めた。
たった一言であったが、その音は真剣を帯びていて。
反射的に喉を詰めるエリックに、ミリアは──金色の眼差しで述べる。
「もういっこいいかな。
…………おにーさんに言いたいこと、ある」




