7-21「ずったずたのぐっさぐさ」(7P)
────”一瞬”。
その中に棘を感じたような気がして、エリックが一瞬出遅れた刹那。
ミリアは
そのまま
口を
開く
「ぶっちゃけ────…………
仕事できるのも忙しいのもわかるけど限界まで詰め込んでぶっ倒れるとか、迷惑でしかないよね?」
────うっ!
「人に『体調管理』だの『栄養摂れ』だの言っておいて、自分は『寝不足で蓄積疲労で再起不能』とかどの口が言うのかな?」
────ぐさっ!
「勉強も楽しいみたいだから何にも言わなかったけど、それも業務圧迫の原因だよね? っていうか自分でやること増やしておいて調子悪くするとか本末転倒もいいところだし、わたし何度も声かけたのに平気だって言っておいて平気じゃないとか笑い話にもならないよ?」
────ざくっ!
「つーかそもそも、『部下に仕事回せず自分で抱え込んで全部やる』って、無能がやることでは?」
────どすっ!!
「『リーダー』、できてなくない?」
「〜〜〜〜〜────っ……」
はにかみ和やかから、一転。
歯にものを着せぬどころではない、串刺し剥き出し急所突きの連打に、エリックは歯を食いしばり黙り込んだ。
言葉もない。
瀕死である。
無遠慮の口撃に思わず前のめりで俯向き、倒れ込みそうになるのを堪えるエリックの向かい側で────ミリアは頬杖そのまま、ぽーんと斬撃を繰り出すのだ。
「リーダーって。『部下の能力も測って様子を見ながら、仕事が円滑に回るよう采配する』のが役割だと思うんだけど違う?」
「────君……!」
「『時に・抱え込むのも我慢して、不出来なそれも飲み込んで、成長を促しつつ全体のバランスを見て育てる』のが『リーダー』であって、おにーさんそれ『リーダー』違う」
「ちょ」
「ただの暴走。ワンマン。独裁政権。ダメだめの、駄目」
「…………もう少し手心というか……!」
「いつもバシバシ浴びせておいて加減してもらえると思っているのか。あまい。」
「言い方ってものが……!」
「これでも優しく言いましたし〜。
加減しましたし〜。
もっと針仕込んだ方をお望み?
針山コースがいい?
やろうと思えばできますが、どうします?」
「…………っ」
テーブルの向かい側。
ほのかな笑顔で『まだまだいけるけど、どーする?』と目で語る彼女に、エリックは唸り声をあげて沈黙した。
何も言えないとはまさにこのこと。
グサグサのズタズタである。
全ては自分の自己管理の甘さと未熟さが招いた結果だが、ここまで言われるなんて思いもしない。
──が。
思いっきり迷惑をかけたミリアに、エリックが返せる言葉は────
一つしかなかった。




