表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

451/592

7-21「信用してない」(6P)





 日が差す一室で、エリックは言葉を無くしていた。



 核を突きながらも、優しく手を引き抜け出せたような。

 痛みも苦しみも伴うが、それでも周りがぐんと開けたような。

 複雑ながらも、心地いい感覚に言葉が出ななかった。

 気持ちが、思考が変わっていく。

 『任せてみようか』と変わりゆく。



 今まで何度も『なんでも言ってくださいね』と言われてきた。

 それを『ランベルトの者だ』と線を引いてきた。

 その気遣いを、声かけを何度も袖にしてきた。



 それは意固地でもなんでもなく、自領を統治する責任であり責務だと思っていた。



 しかし。



(────あいつ……そうか……)



 エリックの頭の中。

 初対面であるはずのミリアにこぼしているヘンリーの姿が、浮かび・消えていく。



 舞踏会で、諸侯同盟円卓会議で、ことあるごとに声をかけてきた彼の姿が、空になった皿に映る。



 その『気遣いながらも少しばかり寂しいような、傷を受けたような顔』が脳裏によぎり──湧き出た罪悪感に、眉を下げた。



 ──ああ、痛い。

 ヘンリー(あいつ)の身になり、胸が痛い。




(────俺は……意固地になっていたのかもしれない……)




 言われるまで気づかなかったことにも反省だ。それよりなにより『何度も言ってくれていたのに袖にしてきた』事実に反省が滲み出る。


 しかし、それと同時に感じている暖かさに、ほんの少し。



 目尻に違和感を覚え視線を逃した先、食卓の向こう。

 光差し込む世界で微笑むミリアの眼差しは、優しく、穏やかで──



 そんな彼女に、エリックがふとはにかんだ時────

 


 ミリアは、

 柔らかな頬杖に笑顔を乗せたまま


 さらににっこり、

 すべてを許してくれそうな微笑みを浮かべると、




「────で、ここまでは”綺麗なやつ”で。」

(…………ん?)







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ