7-20「ちょっと待て ヘンリーだなんて聞いてない」(5P)
「でも、わたしああいう人得意じゃないから『お食事〜』って言われたけど『他当たってください』って言っちゃった」
「あいつ……!」
「針山投げといた。勝った」
(さすが、おにーさんのチームの人)
──それは、口の中。
沈痛な面持ちで怪訝を露わにする彼を眺めつつ、キャベツと鶏肉を飲み込んだ。
エリックにその自覚があるのかないのか不明だが、ミリアの中で、エリックとヘンリーは『ざっくり分けてしまえば同じ部類』だ。『女性に声をかけるのを躊躇わない人枠』である。
エリックを『チャラいヤツ』とは思わないが『女性慣れしてる』とは思っているし、その様子も散々見てきた。
彼は、ビスティーの独自サービスのエスコートも簡単にこなし、客に対して褒め言葉を浴びせまくり、抵抗もなく腰を抱く男だ。
そこだけ見ればとんだ女たらしだが、通常モードのエリックは女性に対して冷めていることも知っているし、誠実なところも見てきている。
自分に対して手を出さないだろうという信用もある。
──総じて『女たらしではないが、慣れきっている』という言葉がふさわしい。
(……ついでに言うと「罪作り」ね。この人どれだけ「片思いさん」作ってきたんだろ?)
もぐもぐしつつ、ちらりと盗み見て呟く。
客の様子を見ていてもわかる。この男が今までどれだけ、女性に対して「彫刻美麗スマイル」を振りまいてきたのか。
(……まあ。本人の恋愛履歴とか知りませんけど。)




