7-19「ノースブルクの朝食から」(5P)
「……ほら、さっきの食べる前のお祈りのポーズ。
『ありがとう』も胸に両手当てて言うじゃん?
一緒だな〜って思って。
そこから来てるんだな〜って」
「…………ああ、言われてみれば確かにそうだな。
特に気にしたことはなかったが、紐解いていけばそうなのかもしれない」
言うと、彼は細やかに頷きながら、真面目な表情で口元を隠した。
その所作に、ミリアがこっそり(……考えてるときに口隠すの癖だよね)と呟く先で、彼は厳かを纏うと、凛と背を伸ばし述べるのだ。
「────シルクメイルの地は、女神が富を齎してくださり現在がある。この地に住まう民々は、古来より、『全ては女神様の加護のおかげだ』と感謝と祈りは欠かさなかった。
……それがいつしか、生活の中にも入り込んだのだろう」
「…………ふう〜ん……」
「特段意識していたわけではないが、言われて気づいた。
宗教と文化・そして生活というものは、我々が気が付かぬところで密接に関わり形作られたものなのかもしれないな」
(…………やっぱ…………
たまに口調すっごく硬くなるよね、このひと。
おにーさんじゃないみたい)
彼の誇らしさと厳格さを纏った言いように、しげしげと相槌を打ちながら、口の中のクロワッサンを飲み込み、胸の内で呟く。
この前から気になっていた。
スネークギルド長とのやり取りといい、フィルラップ講座の時と言い、やはりエリックは時々口調が固い。
その話し方は、まるで、貴族や身分のある者の話し方のようにも思えるし、きちんと仕事をしている男性のようにも感じる。
ヒトは誰でも、その場に応じて話し方や所作を変えながら生きていくが、エリックの場合は──
(──話題? に釣られてる?)ような気がして。
そこを頭に残しながら、ミリアは、何気なく、思いついた事柄を口にした。




