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7-19「ノースブルクの朝食から」(1P)


 



 公園からミリアの家へと、意識トリップして一悶着。

 



 過労で気絶から回復したエリックを待っていたのは、ミリアの『狭い・寝相悪い』の文句の嵐と、普段は味わうことのない『民草(たみくさ)の朝』だった。




 『朝用のパンが無いから買いに行くよ』と言われた瞬間、常に焼き立てが出てくるエリックは戸惑ったが、『メイドや執事を雇う余裕のない者はそうなのか』と頭の中で納得し、言われるがまま街を歩いた。




 道中、彼女が寝言で呟いた『ギル』という人物について訊ねたところ、「あー、それ弟」と抜けた言葉が返ってきた。彼女には年の離れた弟がおり、小さなころはよく寝かしつけをしていたらしい。



 「実は兄も居るんだよね、同い年の。兄っていうか弟感覚。男の子ってどうしてああなのかなー」と語るミリアは完全に長女の雰囲気を醸し出していた。




 そんなミリアに納得しながら、訪れたのは小さなベーカリーである。



 『ベーカリー・ペコ』と看板を下げた店の中には、ベーグルやプレッツェル・バケットやクロワッサンをはじめとする、山のようなパンが並んでいた。




 その品ぞろえに驚くエリックの(かたわら)、ミリアが店の主人に『恋人か』と尋ねられ秒速で否定したことに、彼の中僅かな複雑感がもんやりと広がったが、それらは並んでいるパンの値段で直ちに飛散していった。




 バターの香り漂う大きなクロワッサンが、ふかふかのベーグルが、僅か100メイルで売られている事実に、彼は言葉を失ったのだ。


 その値札を前に(桁がずれているんじゃないのか、採算は取れているのか)と固まるエリックをほったらかしに、ミリアも店主も慣れた様子で会計を済ませて────今。






 

 ボルドー通り50067・アパートメント「ティキンコロニ」301。

 一人暮らし用の部屋で、二人は、食卓を前に揉めていた。



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