7-18「こんなことを言ったら君は俺を軽蔑するかもしれないけれど。昨晩のことは、本当に記憶がなくて……、君にあんなことをしておいてどの口が言うんだという話だが、その、」(5P)
言われて今度はミリアが首をかしげる。
なんのこっちゃ状態だったが、エリックは真剣を纏って間髪容れずに言葉を返すのだ。
「起き抜けに言われた。君がそう言うから、俺はてっきり……!」
「言った覚えがないですね……?
言いましたっけ……?
それ、わたしの話……?」
「……君以外に誰がいるっていうんだ。俺は起きていたのに」
ぽけらっとした言い分に返ってくるのは若干の苛立ちと怪訝。
不安から安堵へ。
安堵から怪訝へ。
グラデーションのように変わるエリック、しかしミリアは首を傾げるのみだ。
(────なんだっけ?)
うーん、こりこり。
(────覚えてないんだけどな~……)
「おにーさんが寝ぼけていたという可能性は」
「────ない。
目覚めたら君がいて、眠気なんて吹っ飛んだ。それから二時間、ベッドの上で身動き一つ取れなかった。二度寝もしていなければ寝ぼけてもいない。言っておくけど、気のせいでもなければ記憶違いでもないぞ? 『妖精のしわざじゃない?』とか、そういうジョークは要らないからな?」
「…………さ、先回りしてきた……妖精キノセイさんとか、懐かしいね……」
「こういう場合、君は茶化して誤魔化す傾向にある。こっちは真剣なんだ。封じさせてもらうぞ」
うっ……。
ベッド脇、サイドチェアの上から気迫を叩き込んでくるエリックに、ミリアは身を竦めて喉を詰めた。
エリックの牙がこちらに剥いた瞬間である。
じわりと感じる剣幕に、(マジだ)と呟き視線を反らそうとした時。
エリックの言葉は、重みと共に飛んでくるのだ。




