7-17「アタるすべてが柔らかい……」(2P)
──瞬時。
エリックはそのまま、瞼も開かず脳をフル回転させた。
思い出せない。
思い出せない。
冷静にならなければならないのに、背中を流れる冷たい感覚に全部が吹き飛んでいきそうになる。どくんどくんと心臓が煩い。嫌な予感しかしない。
先ほどまで心地よく感じていた、素肌にまとわりつく綿生地の感触も今は動揺の素。「素肌にまとわりついているということは、そういうことだ」と脳が語る。
指の先まで流れた凍てつく感覚に、心臓が先ほどより大きく嫌な音を立てる。
──しかし!
(────まったく思い出せない……ッ!)
今にも飛び起きて叫びたい衝動に駆られながら、エリックは記憶を掘り返した。瞼のつくりし闇を前に考えるが、公園の先が何も出てこない。
冷や汗が流れる。
だめだ、これ以上記憶をたどっても情報など出ない。
ならば現状把握だ。
真実を見極めろ。
いいか、冷静に現状を把握するのだ。
──そう、意を決したエリックは、ふうっと大きく深呼吸。
そしてそっと、その目をひらき──
(────どこだ、ここは……!?)
逆に分からなくなった。
飛び込んできた天井も・部屋も・匂いも何もかも知らない場所だ。
完全に訳が分からない。
過程がすっぽ抜けている。
いや、そもそも腕の中にいるのは──────
(────誰だ)
わずか数秒。
先ほどより煩くなった心臓の音を耳に、そぉっと、肩を抱いてしまっていた腕を引き、わずかに距離をとる。
誰だ、誰だ、誰だ。
この女は誰だ。
腕の中。こちらに背を向けすうすうと寝息を立てる娘の髪はダークブラウン。そこでもう「まさか」が駆け巡るが、確認しないことには前も後ろもない。
飛び起きたい衝動を抑えつつ。
そぉ────~~~っと、上から。
彼はその顔を覗き込み────




