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7-17「アタるすべてが柔らかい……」(1P)
耳に届く小鳥のさえずり。
瞼の向こうの明るさに、朝を感じて。
素肌で感じる綿生地にも、頭の中で絡みつくまどろみにも、もう一度、意識を委ねたくなる。
────ああ、起きたくない────
決して声には出さぬ素直な怠惰を愛でるように、彼はごろんと寝返りを打った。
途端、こつんと当たる、暖かく柔らかな体に気が緩む。
丸い背中、鼻をくすぐるいい匂いに、(これは女の体だ)と認識した腕がそのまま、無意識に腕の中へ抱き寄せる。
(───、柔らかい。)
肌で直接感じる・女の柔らかさ。
ふんわりとした細い髪。
すうすうと心地よく耳に届く寝息。
腕の中にすっぽりと入ってしまうサイズが可愛らしい。
後ろから抱きよせ護る満足感は男の特権だ。
久しく抱いていない女の柔らかさに、無意識のうち頬が緩んで──
(────── ん ?)
それに気が付いて。
エリックは一人、ベッドの中で固まり眉をひそめた。
(女の体????)
(女の身体?)
全身に血液がめぐる。
腕の中の女。
寝ていた自分。
ぶっつり途切れた記憶。
なにがどうしてこうなった?




