7-16「恥ずかしミリアの床事情」(4P)
(──それは、『旦那さま』じゃないのかな……?)とも思いつつ、彼女の疑問は止まらないのだ。取り留めもなく、出てきた言葉をそっと、投げかけていた。
「ねえ、おにーさん。
キミ、ずっとずっと押し込んでた?
なにか我慢してきてたよね?
それもキミの壁?
薄氷みたいなの、あるよね?
そんなふうにしないとダメだった場所に居たの?」
「…………それって、今も続いてる?
それとも、もう終わってる?」
「……旦那さまには、ソレ言えてる? 相談できてる?」
「おにーさんの本音、旦那さまには言えないの?」
「言えないのもわかるけど、いわないと旦那さま、がっかりすると思うよ」
「まあ、『もう良い環境に居ます』って言うなら、よけーなおせっかい、ごめんね?」
…………すぅ…………
問いかけに返ってくるのは、静寂に乗せた寝息。
いつもの部屋。
慣れた部屋。
健やかな寝息と、問いかけの余韻だけがそこに広がって────……
「…………なーんて。寝てるし。
お返事は返ってきません。
でも、それでよかったのだとミリアは思います」
ぱっと、モードを切り替えて。
まるで物語の一文を読み上げるように、ミリアは虚空に向かって思いを告げた。
思うことはいろいろあるし、投げかけたい言葉もあるが、それで返ってきたとて、今。うまく返せる自信はない。
──他人は、思ったより複雑なのだから。




