7-15「ボクの自慢の盟主サマ」(12P)
言われ、ぐるり。
考え言葉を用意する前に、ヘンリーの追撃がやってくる。
「わかる、わかりますよ! こう、仮面でもつけてるのかっていうか! 無骨で愛想がなくて、鉄か石畳か陶器で出来てるじゃないですか! この朴念仁!!」
「どっちかっていうと…………表情、出る方じゃないですか……?」
「そうでしょうそうでしょう! ほんっとーに朴念仁で! たしかに綺麗な顔だがまるで石で出来てんのかってぐら
────え゛?」
「表情。
出る方じゃないですか…………?
エリックさん」
勢いよく流れ出した愚痴を堰き止めて。
まともに顔を引き攣らせ固まったヘンリーに、ミリアは『解釈違い?』の眼差しを向けたのであった。
「────いや〜…………
マジかよ参ったなあ、これは…………」
盟主エルヴィスを置いてきて。
ボルドー通りを行きながら、ヘンリーはガリガリと生え際を掻いた。
思わず振り向き眺めるのは『アパートメント ティキン・コロニ』の風貌である。今はもう豆粒ほどしか見えない建物に、苦々しく口を開いて顔を引き攣らせた。
原因は、もちろん。
先ほど出会った女性・ミリアの言い分だ。
エルヴィスという男のやりにくさについて掬い上げたつもりだったが、彼女から出たのは真逆の意見。彼女は、靴の中を嗅いだような猫のような顔をして言うのである。
『結構笑うし、怒るし……なんというか「結構顔に出る人」…………じゃ、ない、です? か?』
(ボスが?
エルヴィスさまが?
ウッソだろ、何かの間違いだ)
思い出して首を振る。
理解が追いつかないと言わんばかりに首を振る。
しかしあの顔は、『真面目にきょとんとしている顔』だった。




