7-15「ボクの自慢の盟主サマ」(11P)
その声色が放っているのは、理解と許容。
警戒の色もなく、納得した様子のヘンリーに、ミリアが小さく目を見開いたその先で。
彼はなにかを噛み砕くようにぐるりと宙を仰ぐと、はぁ~と軽めの息を吐きつつ頭頂部を掻きながら、
「いや? まあ〜────
そっちはそのままよろしくお願いしますよ。
まるっきり蚊帳の外だが、リーダーにも何かお考えがあるんでしょう。
考えなしに動くお人じゃあないし、人を見る目もある。
そこだけは間違いないんで、ぼかぁ下手に手ぇ突っ込んだりはしません」
『明らかに何か』、『腹に落としたような様子』で。
その日初めて、ヘンリーの薄紫の瞳がミリアを正面から捉えた。
ヘンリーという男の中で、一体何がどうなってその結論に至ったのかまるでわからないが、彼が纏う空気に「警戒」はなく、むしろ、今あるのは理解と同調。
彼はそれをそのまま体現するかのように、肩をすくめて口を開くと、
「────にしても、アンタも苦労しますね。
この人、やりにくいでしょう。仏頂面だし。顔動かないし」
「────うん? まあ……?」
当然のように言われたそれに、瞬間的・相槌を打つミリア。
滑らかに滑り出した愚痴っぽいトーン。
ぱちぱちと瞬きで間を保ちつつ、くるりと瞳を回して考える。
ミリアの知るエリックは、確かに顔面の動きが鈍い方だが、そこまでだとは感じなかった。
(──……そう、なのかな? でも激怒されたりしたこともあったし、爆笑されたこともあったんだけど……??)
と『怒ったり笑ったりするエリック』が回るミリアの前で、ヘンリーは止まらない。
「考えが読めないっつーか、表情に出る方じゃないっつーか、何考えてるか掴めないっつーか」
「ん、はい」
「『なにかありましたか?』と聞いてもピクリともしないし、難しいこと考えてる以外何も解らないし、笑顔は怖いし威厳というか雰囲気が半端ないじゃないですか。壁が厚すぎるんですよね。こんなこと言っちゃなんですが、アンタも苦労してるでしょう!? ねっ?」
「──────う?」




