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7-15「ボクの自慢の盟主サマ」(10P)
(──わたし、好きでこの名前になったわけじゃないの。名前でひっくり返すやつ、マジ嫌い♡)
────と。
にっこにこ笑顔に針を潜ませるミリアだが、『女性は口説く』がセオリーのヘンリーは怯まない。
パチンとウインクなんぞを送りつつ、ふわっさぁ! と髪を掻き上げ、次なる定型文を装填し、寝ている盟主の隣でミリアに微笑むと、
「そう言わずに♡ ボクの女神様になってください♡」
「ふさわしい女性がいると思います〜♡」
「いい店知ってますよ♡」
「おにーさんと快気祝いにどうぞ〜♡」
「貴女と食事ができないなんて、人生の損失です……!」
「なら他で補っていただいて♡」
「ガードかったいなあ〜♡」
「ふふふふふ〜♡」
アパートメント・ティキンコロニの一室。
『たまには庶民の女もいいかも』と軽く口説くヘンリーと
『名前で翻すやつ・くそ野郎♡』な姿勢を覆さないミリアの
にこにこ笑顔スマイル攻防は、ミリアの寝室で渦を巻いて────……
「……なるほどねえ。
────『仕事仲間』か」
笑顔の攻防を断ち切ったのはヘンリーだった。




