7-15「ボクの自慢の盟主サマ」(7P)
目の前で広がる感情に、ひとつ。
(ヘンリーさん、エリックさんが大事なんだ。
だから、警戒もするし、焦るし、やきもきしている。
なるほど。
『やってあげたい』・なるほど)
くるりと瞳を回す。
(それに対して、おにーさんは、『仕事はできる人』。
『できるから上に立てる人』。
『全部できちゃう』けど、……たぶん『頼るの下手な人』)
ぽつぽつ。ぽつぽつ。
情報が頭の中で組み立てられていく。
(…………で。『倒れたら、怒ったり心配する人がいる人』)
今までの印象と、新しい情報が組み合わさり、『エリック・マーティン』が鮮やかにかたどられていく。
それでもまだ、全てが見えるわけではないが、僅かに垣間見えた『知らないエリック』が『おそらく自分の想定する彼とそう大差ない』と仮定づけた時。
ハニーブラウンの眼差しに気づいたヘンリーは、『はっ!』と顔を上げると、慌てて申し訳なさそうに眉を下げ手を振った。
「あ、あぁ、すみません。
つい愚痴っちまった」
「ああ、いえいえ。まあ、おっしゃりたいこともよくわかるというか……」
「わかってくれます? でしょう?
いやでもこれ黙っといてくださいね、不敬に当たるんで、内密に!」
(…………ふけい?)
────うんっ?
頷いたと同時。
瞬間。
止まる思考と固まる顔。
(職場のリーダー──……だよね?
『失礼」じゃなくて、『ふけい」? うん?)
────あれ────……?
目の前で慌ただしく生え際を掻くヘンリーを蚊帳の外に、ミリアは『接客モード』のまま、静かに考えを巡らせた。
違和感だ。




