7-15「ボクの自慢の盟主サマ」(4P)
──── 一瞬。
ヘンリーの、部屋を貫くような、鋭利な牽制と警戒に
ミリアは思考すら止め喉を絞った。
自室のベッドの、その隣。
エリックの横に着いた男から放たれる気迫に息を呑む。
エリックほどの圧はないが、ヘンリーという男から出る警戒は、女が密室で食らう気迫としては十分だった。
突如放たれた刺すような警戒に、ミリアの肩をすくめ体を強張らせるが────
(……。
これ、くそまじめに正直に答えたらやばいやつ? だよね?)
しかし、それもほんの一瞬。
ミリアはくるりと瞳で空を撫でる。
(このヘンリーってひと、どういう繋がりかわかんないし。毛皮ミッションは極秘だし。でも、変な関係だと思われたくないし~)
「………………………………しごと、」
「仕事?」
「そう、仕事です〜。お仕事を一緒にしていまス」
打って変わって、のんびり、のほほーん。
ゆるゆるモードに緊張を隠して、こくこくと頷いて見せた。
口調に若干のぎこちなさはあるが、それを隠すゆるゆるトーン。これは、ミリアの得意技だ。
緊張に吞まれないように。
必要以上に畏縮しないように。
自らを保つため・または距離をとるため「ゆるゆるとした線を引く」のだ。
このような振る舞いの効果は、人によってさまざまだし、それが仇になることもあるのだが、この処世術は役に立ってきた。
いくら剣幕で押されても、のらりくらりと返され続ければ、多くの人は面を食らい同調してくる。馬鹿馬鹿しいと怒り引き上がる人も居るが、それは稀である。
そんな、ミリアのゆるゆるモードに引きずられ、小さく目を見開くヘンリーに、彼女はさらに両手の指先を胸の辺りで合わせると。




