7-15「ボクの自慢の盟主サマ」(3P)
なんだか、違和感。
(……言い方、言い方が……口調? かな?
リーダー、リーダーに向けてっていうより……うーん……?
…………この人心配性?)
くるり。
瞳を回して、じっと見る。
──公園からここまで嵐のような展開で、ミリアは、ヘンリーという男の素性を聞けていない。
「エリック本人」ならともかく、その周りの友人や同僚に関してはそこまで興味はないし、ここで根掘り葉掘り聞く気もなかった。
しかし、ヘンリーがエリックのことを『リーダー』と呼び、敬語を使い、血相を変えて安全なところに運んだ様子から、ヘンリーにとって彼が『上』であることは解る。
二人関係や、それ以上のことはまるで分らない、が────
(────『リーダー』……かぁ。
やっぱ、そういう立場の人だよね〜……)
と、胸の中で呟いて”ちらり”。
思い出しながら”納得”。
そんなハニーブラウンの瞳で見つめるベッドの中の彼は、静かに寝息を立てている。
その寝息と表情を遠目に、彼女が思い出すのは、倒れる前のエリックだ。
彼が口にしていた「暑くないか」という言葉、どう見ても疲れの見える顔。
布石はいくらでもあったように思える。
思い返せば少し前から「この人休めてる?」と疑問は持っていた。
午後にふらりとやってきて、ビスティーの手伝いや雑務をこなしながら、寝る直前まで魔術の教科書を読みこんでいるらしい彼。
だから時折、「疲れてない?」「寝てる?」と声をかけてきたのが、蓋を開ければ「こう」である。
────『言わんこっちゃない』。
(──────〜ったくもぉ〜〜〜…………)
自室の隅。
顔のパーツを引き伸ばし、疲れ混じりに肩を落とす彼女。
「ほら見ろ〜〜〜」が唇の裏で踊りまくる。
これがヘンリーの前でなければ、寝顔に向かって文句を垂れているところだが、それを無理矢理”ぐぐぐっ”と潰して。
彼女は息を吐きつつ眉を落とし、唇に不満を宿すと、
(朝だるそうにしてるな~と思った時、無理矢理にでも追い返せばよかった〜〜〜っ……も〜……
でも? それでおにーさん帰る??
帰っても魔術書開きそう〜〜
大人しく寝るってこと出来なさそう〜〜〜
ほんっと子どもかよ~~~、男の子ってそういうトコだよ、もう~~)
ぐるぐる回る後悔と呆れと、彼の行動予想に『皺っ』。
仮にもエリックはミリアより年上の男性なのだが、完全に「子」扱いするミリア。
そして次に脳が組み立てるのは『おにーさん・強制送還の方法』だ。
『這いつくばってでも仕事や約束を遂行しようとする彼を、いかに帰らせるか』が頭の中で渦を巻く。
(魔法で気絶させてお屋敷に……
ううん待ってダメ・気絶させたら運べない。
運搬の魔法は生き物には使えないし。
そもそもここノースブルクだし。
見える魔法は絶対ダメ。
じゃあ、意識を操る系の魔法を開発して、おにーさんの身体を意のままに…………いやいや、それが出来てたらわたしはマジェラのエリートで、今頃大魔導士様のお付きとしてエリートかいど)
「────────で。
うちのリーダーとは、どういったお関係で?」




