7-14「相棒の彼に押し倒されて……」(7P)
──どすんっ!
「おしり! いたい!」
思いっきり尻を打ち声を上げた。
彼を庇うように座ったのはいいのだが、状況は悪化の一途である。
動かぬエリックに足が挟まれて動けない。
「──う……! お、お゛も゛い゛……!」
向かい合い抱っこで支えるつもりが、じりじりと押し負けていく。
上半身だけなのに、背筋が負ける、腕が負ける。
瞬く間に、ミリアは真昼間の公園で、文字通り押し倒されてしまった。
「だ、だれかー!
だれかー! うごけない!
重い! 重いたすけて──────っ!!」
「────麗しき女性の助けとなればっ!
このヘンリー、貴女の声に答えますっ!」
渾身の叫びを聞きつけて。
しゅぱぱぱぱぱ! という音と共に、現れたのは一人の男。
名を、『ヘンドリック・フォン・ランベルト』。
──そう。
エリックの臣下であり、調査機関ラジアルの一員『ヘンリー』である。
ミリアの、「救世主……っ!」と言わんばかりの眼差しを余裕で受けながら、ヘンリーは、倒れこんでいる彼に向かって「やれやれだぜ」と言わんばかりに肩をすくめると、
「あ〜あぁ、まーったく、無理してデートとか来ちゃった感じっすか? ったく、しっかりしろよなぁ〜〜彼女さんに迷惑かけてんじゃ
────閣っ。」
顔を覗き込んで固まった。
完全無比に硬直する。
まさかこんなところで、女性を押し倒すようにぶっ倒れている情けない男が、自分の盟主であるとは思いもしない。
修羅場である。
「…………リーダー!!?
あなた、こんなとこでなにやってんすか!」
「え! おにーさんの知り合いですかオニーサン!」
「え? えぇまあ知り合いっつかなんつか、いや待ってくれよなんだこの状況、アンタ、休めるとこ知ってます!?」
「うちが近く! 通りの向こう側! ありますっ!」
「アンタの、家……!?」
嵐のようなやり取り。
びしっ! と指さすミリア。
意識のない状態のエルヴィス。
今この状況全てに、ヘンリーの中、様々な困惑と懸念が高速で渦を巻き────!
「────いや、背に腹は変えられないってか!
────ベイダー! ブルーザ! アンドレ! タイガ!
運ぶぞ!」
『イエッサー!!!』
どこからともなく現れた筋肉隆々の男たちとヘンリーに助けられ。
意識のないエリックと、混乱気味のミリアは、一路。ミリアの家──アパートメント・ティキンコロニを目指して動き出した。




