7-14「相棒の彼に押し倒されて……」(3P)
(────ああ……、そうか……
……この暑さも ミリアには普通なのか……)
どろりと鈍い頭で、遠い南のマジェラを想像する。
──ここより暑いマジェラ育ちの彼女だから、この暑さの中でも平気な顔をしていられて。マジェラ育ちの彼女だから、そもそも感じ方が違うのだ。
(──……俺もマジェラに生まれ落ちたのなら、この国の暑さにも平然としていられたのだろうか……)
ぼんやりとした頭で考える。
暑さとだるさが思考の邪魔をする。
頭の片隅で「俺が体調不良なのではないか」という考えがよぎるが、どうも認めたくなかった。
──認めたらもっと酷くなる気がするのだ。
「病は気から」ではないが、戦場でも傷があると自覚した途端痛み出す。
認識してしまったら駄目なこともある。
気が付かないふりが、自分を救うこともある。
今まで感じたことのない、どろりとした視覚の中。
歪んでいるような気さえする石畳に、ゆっくり、ゆっくりと思考を回していく。
(……暑い……
大人しく休むべきだっただろうか……
しかし、ミリアはどうなる?
──仮に俺が……、
今日、
来なかったとして……、
彼女は、延々と待ちぼうけを食らうことに……)
「────ねえ、そろそろ行く?」
ミリアの声が早口で響き、
妙に間延びし始めた──遠くに行くような感覚を引き戻すように顔を上げた。。
どろんとした重だるさが視界の端に蔓延する。
頭の奥底がジンと痛い気もする。
しかし、そんなことを知らぬミリアは、彼の世界の中で、こりこりと口元を掻きながらこちらを見ると、
「……女装道具は揃ったけど、どうせだからちょっと日用品見て回りたくて。落ち着いちゃう前に動きたいし……
おにーさん、用事ある?
ご一緒してくれる?」
「…………ああ」
「……ねえ、大丈夫?」
「…………ああ」
問いかけに頷いた。
重い。
おもい。




