表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

391/592

7-14「相棒の彼に押し倒されて……」(2P)


 



 広場を行く雑踏を恨みがましく眺めながら、膝に肘を突くエリックの隣から、刺さる不思議そうな眼差しに気が付いて。


 エリックはずっしりと上半身を起こすと、


 

「………………暑く、ないのか?」

「暑くないけど……?」




 ぐっ……と背中に力を入れて、ゆっくりと放った問いに返ってきた軽いトーンは、エリックを黙らせるのに十分だった。



 隣で座るミリアは、薄手の長袖を合わせているにも関わらず平気そうなのである。


 正直めまいがするぐらい暑いのに、正気なのかと問いかけたい気分だったが、瞬間、エリックの脳に廻るのは「いつものミリアの装い」だ。



 流行りの型のワンピース。

 緩やかで大人しく、人に不快感を与えない恰好。


 首周りは空いているが基本長袖の印象で、言われてみれば、出会った時からずっと、彼女が腕を出しているところを見た記憶がない。

 


 真夏でもそうなのだから、今日がいささか暑くても、平気なのかもしれない。



「……そうか。そういえば、きみ、いつも袖の長い服を着ているよな」

「ん? うん、そだね、長袖」




 言うと、ミリアは目を丸めて自身の身なりを確かめるように両手を開き、手元の袖を引っ張っぱった。


 そのまま手の甲をすっぽりと覆うように袖を伸ばしつつ、腕をさすりながら、


 


「……仕事中、縫い物したりとか、線引くときにカウンターにぺたってくっつくのが嫌なんだよね。

 糸もくっつくし。

 あと、肌出すの落ち着かない。

 元々ローブだったし、なんか、腕周り(このへん)にないと、そわそわしちゃって」

「…………そう」



 恥ずかしそうに肩をすくめる彼女に相槌。

 ミリアは続ける。



「うん、だから長袖。あとマジェラ(あっち)ってもっと暑いから、日よけ対策もあるかなあ。それで育ってるからなかなかね~、落ち着かないの」

「…………うん」


「もともと暑さには強いほうだから、こっちの温度はほんと快適! 長袖でもちょうどいいの気持ちよくて、最高っ! 今日はとくに過ごしやすいよね、お天気で良かったね~♫」

「…………」




 ────眉をひそめたり、おどけるように肩をすくめたり。



 くるくるころころ変わるミリアを前に、エリックは静かに腑に落ちていた(・・・・・・・)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ