7-14「相棒の彼に押し倒されて……」(1P)
塵も積もれば山となる。
それは、経験も実績も、疲労も負荷も同じこと。
公務に依頼に雑務・舞踏会に会議に価格調査・雑務にトレーニングに馬の世話・舞踏会に会議に価格調査に魔術の勉強・祭りの打合せにモデル業務・雑務に雑務に公務に雑務……
それらを延々、毎日繰り返し早数か月。
その日、エリックは、今までに感じたことのない倦怠感に包まれていた。
「…………あつい」
「ん? 暑い?」
暑い。暑い。
重い。重い。
体中の奥底に澱む倦怠感。
隣のミリアの問い返しに答えることなく、エリックはげんなりと唇を下げていた。
季節は9月。
庶民の憩いの場・ミルキーパルクの片隅で。
ベンチに腰掛け・丸まりそうになる上半身を支えるべく、前傾姿勢で肘をつくのはエリック・マーティン。
夏に弱い・雪国生まれの盟主(スパイ兼モデル)の男である。
(……真夏に比べれば……少しはましだが……
今日はおかしくないか……暑すぎる……)
──思わず陰険に目を細め、がっくりと頭を垂らし息を吐く。
先ほどからおかしいのだ。
体が妙に重くて仕方ない。
朝はこうじゃなかったのに、熱を帯びた鉄を奥底に抱えているようで、ぐらりぐらりと視界も揺れるような気さえする。
朝はいつも通りだった。
『強いて言うなら若干体が重いかな』ぐらいで、なにも滞りはなかった。食事もいつも通り済ませ、雑務も片づけ、ミリアとの約束どおり買い出しへと繰り出した。
違和感を覚えたのはつい2時間ほど前だ。
やけに暑いと思った時から、動けば動くほど体の重さが増していく。暑さは季節がら仕方ないにしても、怠さは計算外だ。
まるで、周りの空気が鉛を含んで伸し掛かっているような重だるさに、エリックは据わりきったまなこで空を睨む。
(………………今日は何だよ……なんでこんなに暑いんだ……)
「……?」




