7-13「もこもこのんむ」(2P)
「お怪我されたじゃな~い? 旦那さまぁ、この前のカルミア祭で!」
「ああ、大したことなかったみたいだけど」
「それぇ~! 帰ってきたら取れてて!」
「なにが? どこから?」
「包帯! してなかったのぉ!」
「主治医に許可をもらったんじゃない?」
「んもうイルザ話が盛り上がらないっ!」
「……何を話したいのよ」
「……ダンナサマ、みる、してた、手」
「そうなの! そこなのっ!」
「…………はぁ?」
まったく要領の得ない会話の運びに、まともに眉をひそめ首を傾げるイルザ。
メーチェルの会話はいつもこうだが、それにドロシーが言葉を加えるからさらにわからなくなる。『スマート』『建設的』『要点を絞る』とはかけ離れた話術に、周りが混乱するのが通例だ。
しかし『それがかわゆい乙女のひみつ♡』と信じているメーチェルは、自分の右手を何度も指さしながら、興奮したテンションそのまま言い募る。
「包帯巻いてたところ、じぃ~~~~~~~っと見てるの! じぃ~~~~~っとだよ!? それと、鼻歌も歌ってたの! 鼻歌だよ!?」
「────旦那様が?」
「ハナ・うた? ハナ・うたをする・か? ドロシー、わかる、ない」
「『ハミング』の事よ、ドロシー」
メーチェルとドロシーを自然に捌いて、イルザは話題をメーチェルに振った。
洗濯物が風になびいて、涼し気に揺れる中、うわさ話に花が咲く。
「それで、鼻歌ってどんな鼻歌だったの? メーチェル」
「えぇ~~~っとお~~~」




