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7-13「もこもこのんむ」(1P)






 ──晴れやかな9月の朝。

 目にも鮮やかな青い空の下、オリオン邸の裏手では、にぎやかなメイドたちの声が響いていた。



「ね~えイルザ、ドロシー! メチェルぅ、旦那さまのこと見ちゃったの~! 旦那さま、最近変なの~!」



 洗濯アガリの衣装を、そのままのテンションで広げながら、きゃっきゃと話し始めるのはメーチェルだ。屋敷のランドリーとクリーンアップを担当しているメイドの一人である。



「…………変?」



 それに、静かに言葉を返すのは、イルザ。

 このメイド班のリーダーで姉御肌の彼女は、物静かに視線だけを寄越し、バスケットからタオルを引き抜く。と同時に賑やかな賑やかなメーチェルは口元をくりくり触ると、少女のような口調で語る。




「この前なんかぁ、ベストのボタンをわざわざとってたしぃ」

「けずる、糸、して、してた、ました」


「右手の手袋、ぜったい外さないしぃ」

「ふべん、している、みえる」


「この前とかあ、血相変えて(うま)してたのぉ~! 朝早くだよぉ?」

「『うま、してた』? か?」



 『信じられなくなーい??』と首をかしげるメーチェルに、たどたどしく相槌を入れていたドロシーも首を傾げた。言葉が不便なドロシーも、この屋敷のメイドである。16を超えても上手く話せぬ彼女をフォローするのは、いつもイルザの役目だった。



「────ああ『早馬でお出かけになられた』ということよ、ドロシー。 メーチェル? 旦那様はそんなに早かったの?」

「びっくりしちゃったあ! いつも朝はご公務されてるのにぃ! どこに行ってたのかなあ~?」



 言いながら、洗濯物をぎゅっと握り空を見つめるメーチェル。

 若々しくも幼い口調から出た疑問に引っ張られるように、イルザも、干した洗濯物から手を離して考え始めた。



「──確かに、少し変わったように感じるわね……エルヴィス様は、これまでも気難しいお顔で何かを考えていらっしゃることが多かったけれど……最近は、物憂げに外を眺めるお姿を目にするようになったわ……」



「イルザ、イルザ、それだけじゃないの! メチェル見ちゃったの!」

「なにを?」

「……」



 食い気味に言って、洗濯物を”ぎゅううう”と握り掴むメーチェルと、ただそれに目だけを投げるイルザの横で。言葉がたどたどしいドロシーは、黙って洗濯物を絞る。



 メーチェルが続けた。






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