7-8「走って走って」(5P)
「────ちょ、……嘘!」
焦る脳を抑えながら、慌ただしく目が探すが──ただ規則正しい石畳が広がるだけで、ポシェトはおろか、肩ひもストラップも、チケットらしき紙一枚落ちていないのだ。
(────ちょ、まって!
ちょ……! まって…………!)
その現状に────途端、突き出してくるのは『落ち着けるための、独り言』。
「さいふ……、
────は、そんなに入ってないから大丈夫、鍵は……、
ある、ある、よしよし、ビスティーの組合証もあっちだし、生活にこまるものは入ってな──────…………」
(────────────チケット。)
「────チケット! チケット! チケット!!!
え、泣きそう! えええええええええ!!!」
その事実に気が付いて、ミリアは所かまわず声を上げ辺りをもう一度見まわし始めた。
足元・地面・そのへん・壁際・尻・くるくる・ぱたぱた・腰の裏・背中のほう・体中を叩きまわりながら探すが、無い・ない・ナイ! 足元足元足元、壁かべ、背中に尻に、くるくるくるっと回り探すが見つからない!
「うそウソうそ嘘! 待って待ってウソ嘘!!」
余裕のない目が、脳が、意識が、次に可能性として求めたのは『大通り』。人の行き交うその場所に、引き寄せられるように足が行き────!
「────ひめ、みぃぃぃぃぃつけたぁ!」
「うぅわああああああああああああああああああああああああ!?」
ぬぅら! っと現れたくそ野郎に、肚の底から声をあげたのであった。




