表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

368/592

7-8「走って走って」(3P)






 街中でいきなり声をかけてきて、善意の仮面をかぶり人様を喰おうとしていた、あの男。はっきり言って知りたくなかった事実だが、知ってしまったからには仕方ない。



 

(──知らなかった。リックがあんな男だったなんて……!)

 


 言いようのない失望と怒りに眉を寄せる。


 ──まあ、もともとモデルたちの人柄の情報も無いし、彼らは人格で仕事をしているわけではないのだから、その性格が『最低なくそ野郎』でも文句を言う資格はない。



 ────が。



(あれはないでしょ、あれは~~~~~~~っ!)

 次々湧き出す怒りは抑えられないのだ。



 色々な憧れや思いをニードルで砕かれた気分だ。

 今日までのウキウキも返してほしかった。



「あああああもう! せっかくの日に気分最悪ですがっ!?

 これならまだお父さんの手紙の方がましっ! あれも嫌だけどっ!」



 と、誰にともなく憤る彼女は、次の瞬間。

 脳に湧き出してしまった『あそこで(・・・・)逃げなかったら(・・・・・・・)』の展開に身震いし────



(──よかった、逃げられてよかったぁああ!)



 と自身を抱きしめ実感する。


 今思い返せば本当に危機一髪だった。

 ストールは惜しかったが、『自分』と引き換えにするなら安いものである。


 

(逃げた逃げた、とりあえず一件落着、はい忘れて切り替え!

 これからショーなんだから! 次気を付ければいいから!)




 思い返して騒がしくなる心を、無理やり切り替えて。

 自身に言い聞かせた彼女は、流れるように顔を上げ”ぐぐっ”と拳を握るミリア。




 トラブルに巻き込まれた分、時間は押し迫っている。

 『こんなところで油を売っている場合ではない』。

 


(────おしっ!)



 力強い眼差しを外に向け、彼女が始めるのは『感情の断捨離』だ。



 『リック』はクソ男であったが、それは過ぎた話。

 『リック』はさておき、目標は『オリビア』だ。


  大好きなオリビアに会うためなら、隣のおまけクソ野郎( リ ッ ク ) は視界から消すぐらい、どうってことない。



 

(────とにかく、早く女神の広場……!)




 と呟いて、意を決した右手が、確認のため、『右の腰回り』。

 『かけていたポシェット』を求めて────!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ