7-7「喰われるアコガレ」(7P)
突如。
響き渡るリックの嘲笑に息を飲んだ。
空を仰ぎげらげらと嗤うリックの変貌ぶりが恐ろしく感じて、慄くミリアの前、ヤツは愉快を吸い込み・ぎろりと青い瞳を向け、顔の覆面をべったりと抑えながら言うのだ。
「ンンン、いっけないなあ、ヒメぇ。リックの言うことを疑うなんてえ。オリビアはこの中だって言ってるだろぉおおお? それとも、リックの言うこと信じられないのかなぁああああ?」
「────嘘つき……っ!」
完全に小馬鹿にしている。
あからさまな態度が腹立たしい。
しかし怒りとは裏腹に、腕は一向に抜ける兆しもない。
(──どうしよう……!)
────引き込まれたら最後だ。
ここは何としても逃げなければならない。
掴まれた右腕、余裕しゃくしゃくのリック、狭い狭い路地の中。
状況を鑑みて
ミリアは密かに、左手を右の脇の下に忍ばせた。
焦りを浮かべた表情はそのまま、中指と薬指を奇麗に揃え
────”呼ぶ”。
(──風よ、集え……! 圧縮、圧縮、圧縮……!)
”しゅるるるるるるる……ッ!”
音もなく、わきの下──手の内に集束していく風の球。拳よりもさらに小さく・小さく・小さく。集まる先から圧縮していくその球は、中でぎゅるぎゅると音を立てる。
──と、同時に、しっかりと掴むは、肩にかけていたお気に入りのストール。




