7-7「喰われるアコガレ」(5P)
訝し気に呟きながら、視線の先。
リックに掴まれた腕をぐっと引いてみるがびくともしない。ずんずん引っ張られ、足がもたつき、つんのめりそうだ。
そうこうしているうちに、風景はどんどん妖しくなっていく。
(…………っていうか、ここ、……なんか、どんどん……)
打ち捨てられた酒瓶・どこの誰ともわからない人間の衣類・虫が集りぶんぶんと音を立てる生ごみに──
「──ちょっと、リックさん!」
ミリアは焦りを含んだ抵抗の声を上げた。
リズムよく動いていた足にもブレーキをかけ、引き腰で口を開く。
「──ちょ、ちょっと待って!
リックさん、あの、この先って、えーと、結構ディープなところじゃなかったでしたっけ……!?」
「ンン、ノンノ♡
ダイジョウブ♡
あそこだから、ほら、ヒメ♡」
「────こっ……!」
リックの目くばせに喉を詰まらせた。
思わず突っ張る足とは反対に、機嫌よくぬっとりとした髪を煌めかせたリックが指さしたのは────
「”メイク・ラブ・ハウス”……、めいくらぶはうす!?」
素っ頓狂な声が路地に響き渡る。
『メイク・ラブ・ハウス』。
文字通り『愛を作るオトナの場所』。
別名、『盛り場』ともいう。
そこで営まれているのは『愛を作る』などという行為ではなく『性欲と金が渦を巻く』場所である。
こんなところに──オリビアがいるわけがない。




