7-7「喰われるアコガレ」(4P)
背の高い建物の間をすり抜けて、ずんずんと進んでいく方角に違和感。
眉をひそめ、瞳だけで辺りを見回した。
(なんかどんどん『女神の広場』から離れてるような……?)
どことなく陰気漂い始めた景色に焦る。
通路の奥も暗く感じて息を飲む。
高い壁から滲み出る圧迫感。
見たことのない雑多な路地。
そして何より『遠く離れていく街の喧騒』。
”──おかしい”
(イベント開始まで時間があるのはわかるけど……
主役は早めに会場入りするんじゃないの……!?)
向かう先が、会場とは逆方向だと気が付いた彼女の中。高速で回り始めたのは『今まで携わった会食や婚姻式などのスケジュールなど』だ。
どんな催し物でも、演者はそれなりの打合せや確認事項がある。
素人のパーティーでも、一般人の婚姻式でも、段取りの確認は念入りに行われる。主役なら何時間も前に現地入りし、余裕をもって客を迎えるのが普通だ。
だというのに──今この時間に逆方向は無いだろう。
今現在の正確な時間は確認できないが、このまま離れてしまえば彼はショーに間に合わないのではないだろうか。
「ねえ、あの、リックさん?」
ミリアは動揺しながら声をかけた。
掴まれている腕と、先を急ぐリックと、足早に音を立てる自分の靴音にすら焦る。
「うん~?」
「あの、こっちであってる?」
「合ってるヨぉ~」
しかし、返ってきたのは生返事。
こちらを振り向こうともしないリックの背中が不気味だ。
(────いや、こっちじゃなくない?
どう考えてもおかしくない?)




