7-7「喰われるアコガレ」(3P)
身につける衣装ひとつで、気分も、世界も、自分さえも変わる喜びを知らなかたかもしれない。
──そんな、『選べる喜び』を、『合わせる楽しさ』を、日々の暮らしに華やかさをくれた『ココ』の名を継ぐものに、お礼を言いたくて仕方なかった。
本当ならば、ジュリア本人に告げたいところなのだが、エリック曰く、ジュリアはもう引退しており、表舞台に立つことはないのだという。
ならばせめて、ジュリアの意思を引き継ぎ、今もなお『柱』として活躍しているオリビアに。感謝と、愛を伝えたかった。
ミリアは問いかける。
少し前を行く『リック』に、左腕を掴まれ引かれながら、照れと憧れを湛えて。
「──あっ、あの、リックさん。オリビアさんってどんな方なんですか?」
「ん~、ヒメはぁ、どんな人だと思うぅ~?」
「ええ~っ……!?
……わかんないけど、綺麗で気高い女性じゃないかなぁ~」
質問を返され、上ずった声で答えた。
言われただけで体が熱くなる。
まともに浮かれている。
それを加速させるように、ミリアの中『理想のオリビア』が舞い上がる。
(……きっと、衣装がすごく好きで、奇麗で、おしとやかで、女のあこがれって感じじゃないかな? ミステリアスな感じかも? ん~~~奇麗なのは確定じゃんっ? 写し絵でもデザインがいいのわかるし、きっと物腰柔らかくて可愛いひとだと思うんだけど、……っていうかオリビアって何歳ぐらいなのかな? ううん、関係ないよね、年齢じゃないもん、オリビアはオリビアだもんっ)
緊張で心臓が煩く音を鳴らす中
緩む口と頬を抑え込みつつコクコクと頷く。
そして思考は巡っていく。
(あああああ、ていうか無理っ! オリビアとお話できるなんてっ! どうしよう吐きそう、いいの? いいのかなっ? だってオリビアだよっ? こんなことあるっ?
リックさんってすごくいい人、ごめんね? 疑ってごめんねリックさん……!)
まるで救世主を見るかのような表情で、先行くリックに眼差しを向けた彼女は、映り込む背景に、はたっと気が付いた。
「────って……」
(…………あれ?)




