7-6 レッツ!カルミアフェスティバル(9P)
ぐいーん! と音すら出るような勢いで、前から覗き込まれて目を丸くした。驚き呆気にとられるミリアの前、男は眉を下げ口をくねらせ言うのである。
「ヒメ、ボクのこと警戒してたじゃん〜?」
「あ、うん。
いきなり隣は、びっくりした」
「ヒメ、仕事はなにしてるのかなぁ?」
「へっ? し、しごと?
えっ? なんで?」
突然の話題変更。
脈絡もないそれに、さすがのミリアも驚く前で、男はおもむろに胸ポケットに指を入れると────
するるるん……!
ふわっさぁ……!
「────実はボク、さ……ッ!」
音を出しながら、光を纏いて取り出したのは、
一枚の黒い布。
オールバックの暗い髪もたなびく勢いで、キザっぽく首を振る彼は──
流れるようなしぐさで、黒き覆面を装備し、言う。
「──こういうシゴト、してるんだよ、ネっ……☆」
「────え……っ……!」
「────ヒメ、知ってる? ボクのことぉ……♡」
「…………え、嘘……っ!」
驚くミリアを前に、覆面を付けた男は、|わざとらしくも壁の前。
張られたポスター『オリビアとリック』に並んで見せた。
暗めの髪はオールバック。
スカイブルーの瞳を穴あきの黒き布から覗かせる彼は
壁の中の『リック』と重なって────
「…………ほ、ほんもの?」
(────ほんものの……リック・ドイル……!?)
ミリアは、ハニーブラウンの瞳を丸めたのであった。
────覆面。
黒の布で顔の上半分を覆い隠し、
鼻より上の造形は誰もわからない
『正体不明の広告塔』
華やかでありながら秘密めいた存在の彼らは、もちろん。
『瞳の色も 秘められている』。




