7-6 レッツ!カルミアフェスティバル(8P)
「あの。
わたし。
いま、食べている。
食べていますので、お帰り頂きたいです。
落ち着いて食べたいです」
「アッレ? いいの?
ボク、ヒメのこと追いかけてきたのにぃ」
「なにゆえ」
「ホッラ☆ これ!」
「……え、ストール……! いつの間に……!」
警戒と困惑の声と表情は、驚きの声と共に翻った。
男が出した見覚えのあるストールに目を丸める。
瞬間的に右手が探すのは自分の胸と肩だ。
確かにひっかけていたはずのストールは無く──代わりに、男の手元でふんわりとまとまっている。
無くした事実と、拾ってくれたという事実。
それに対する感謝と、『え、どこで?』が混じりあう瞳を向けるミリアに、ぬっとりとした髪の男は調子よく答えるのだ。
「さっきぃ〜そこの店デェ!」
「……わ、ありがとうございます……!
お気に入りのやつだったのに、気づかなかった……!」
思わず背中を浮かせて、両手でそれを受け取る彼女。
瞬間的に男に視線を向けて、ストールを巻きつけながら、
(……悪い人じゃないのかも……?)
と、ちらり。
(隣に座られてびっくりしたけど、悪い人じゃないっぽい……?)
心の中で小首をかしげて、ミリアは、少しばかり反省した。
──確かに、隣に座られて驚いた。
馴れ馴れしさにもびっくりした。
しかし、それもこれも、男の『ストールを渡すため』のワンクッションだったのかもしれない。
そう考えたら──先ほどの自分の態度は、失礼なものに値するのではないだろうか?
(…………ごめん、髪ペットリのオニーサン……警戒しすぎだったかも……)
と、ミリアがひそかに眉を下げた、その時。
「ネ♡ ヒメ、誤解、とけたぁ?」
「え?」




