7-5「3勤交代シフト制」(3P)
(────ぐあっ、顔がいい……!)
飛び込んできた顔面の造形に眉を絞った。
『彫刻を思わせるような見目麗しい顔つき』。
『……教えて?』と言わんばかりの視線。
(顔面の圧がすごい……っ!)
ぐぐぐぐぐっと唇に力を入れ、葛藤するミリア・リリ・マキシマムは──痛感していた。
当初から『エリックの顔の良さ』については評価していたが、それに『怪訝』ではなく『穏やかと理解』を乗せると攻撃力も倍増しである、と。
別に恋愛感情などを抱いているわけではないが、『その攻撃力』を目の当たりにすると、流石のこちらもどぎまぎするというものである。
しかしそれを感づかれるわけにはいかないのだ。
──奴の名前は『エリック・マーティン』。意地悪にからかってきたり、煽ったりする男である。
エリックに対して恋心など、微塵も抱いていないミリアにとっては──渋い顔で押しつぶすしか、方法など無かった。
──しかし!
『答えて貰いながら教えない』のは、ミリアのポリシーが許さない。
(……教えて、もらったし)
ぎゅん! と絞る顔表面。
(相棒、だし)
巡り巡る『等価交換』と『祭りの記憶』。
(────『フェア』、フェアにいかないと……!)
巡り巡る、『とにかくフェアで居たい』という彼女のプライドが、重く・重く・固く閉じた喉を、ゆっくりとこじ開けて────
「………………つぼ」
「壺?」
ぼっそりと早口。
聞き取れないスピードで呟いたそれをきちんと拾い上げ、不思議そうな声を返したエリックを視界に入れることなく。『心底言いたくないけど』を醸し出しながら、ミリアは──悲壮と痛烈をたたえながら、言う。
「…………まちの、どこかに、
だいたい、
おっきな
壺が、あってね。
そこの、
まわりを、
ぐるぐる……
練り歩く」
「…………壺の周りを練り歩く…………」
────おそらく。
その『異様な光景』を想像しているであろうエリックの声が、期待から呆然へと変わってくのを肌で感じながら。
ミリアはさらに『沈痛』を眉根を寄せ、一拍。
『聞いたからには答えねばなるまい』と『針山の上を行く覚悟』で、続きを、絞り出す。
「…………夜、明かり灯して、
黒いローブで、
延々とあるく……」
「……延々? ……一晩中?」
「三勤交代シフト制で回ってくる……」
「………………」
「……そ、想像しないで、お願い……、
国外出ると、おかしなとこだったんだなって自覚するというか……こっちのお祭り見て、カルチャーショックだったんだから……」
目の前で、今まで見たことのないような、言いようのない難しそうな顔つきで黙り込んだエリックに、ミリアもたまらず両手で顔を覆った。
エリックが黙り込むのもわかる。
これだけ華やかで賑やかな祭りの国で育ったエリックからすれば、おそらく『その想像』は『異形』でしかないだろう。
もちろんミリアにとっても黒歴史だ。
マジェラに居たころから『へんなの』とご機嫌斜めで捉えていたのだが、あの頃は『それが世界共通』だと思っていた。
彼女は勝手に『魔界の王様でも呼びそうな儀式だけど、世界中がやってるなら仕方ないか』と納得させていたのだが、ふたを開けば、ミリアの知る『外の世界』で『そんな呪いの儀式のような祭り』をしている国など、彼女が知る範囲にはどこにもなかったのである。
……もちろん、ありったけの文献を読んだわけでもない。
世界各国を調べて回ったわけでもない。
が、しかし『なかったらなかったでそれはそれでダメージあるからヤだ』と、ミリアは心を守るほうを取ったのだ。
──そして、そんな
『あからさまに怪しい儀式』を
『華やかな成人祭り』を行う国の民・エリックに語るのは────
────『自傷に近しい行為』なのは言うまでもない。
(────く、ぁ~~っ……、言いたくなかったアアアアアアア~~……!)
まるで『10代の時に書きなぐった自己満足ご都合主義の物語』を読み返した時のような羞恥心と痛覚に、のたうち回りたいのを抑えるミリアの隣で。
絶妙に複雑な表情のまま黙り込んでいたエリックは、頬をこりこりと搔きながら『あ──、』と一拍。
気まずそうに息を吸い、




