7-5「3勤交代シフト制」(2P)
「……植え替えの時期なんだ。
この国の子どもは皆、15になるとカルミアの苗を貰い、2年間世話をして鉢の中で育てていく。けれど、そのままでは鉢が狭くなり根詰まりを起こしてしまうだろ?」
「窮屈にもなっちゃうね? あれ、大人の背より大きくなるもんね?」
「……そういうこと。
まあ、鉢よりも庭に植える家庭が多いんだけどな。
『狭い場所から広い場所に植え替える』ことで『しっかり根を張り、大きく育ちますように』と。
だから、我が国の家庭では、成人を迎えた分だけ庭にカルミアが植わっているんだ」
「そっか。
てっきり開いた花がスカートみたいだから、それでかと思った」
「…………ああ、スカートか。
確かに、ひっくり返せばそう見えるかもしれないな」
説明を聞いて、ひとつ。
納得しながらも驚くエリックのその隣で、ミリアは指先でカルミアの花に模して遊ばせていたウォルタをさらに遊ばせた。
カルミアは、ふんわりとしたカップ型の花を咲かせる。
その様子は確かに『いくつもの希望を抱いている』ようにも見えるが、ミリアにとっては新緑の絨毯の上で舞い踊る、女性のように見えていた。
それを思い描いて、ひとつ。
ミリアは、機嫌よく水の花を散らして胸の前で手を合わせると、
「ふんわりしてて可愛いよね~。
ひっくりかえすと、ふんわりドレスを着た貴婦人さんがそこにいるみたいで~♪」
「……君、本当にその世界の人間だよな」
「ふふん、そりゃあそうですとも♪」
理解と友好を漂わせて笑うエリックに得意げに胸を張った。
ノースブルクのワンピースに出会って十数年。
服飾に携われるようになって5年。
何を聞いてもワンピースやフリル・スカートなどに発想が行くのは職業病であるが、ミリアにとってそれらは誇らしい病である。
エリックに褒められたような気持ちになって、鼻も高らかに『ふふふん♪』と浮足立つミリアの隣から
その問いは、唐突に、そして無邪気に投げられた。
「……君のところは?」
「マジェラ? 成人の儀式のこと?」
「そう、何かしたりする?」
(…………う゛っ…………!?)




