表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

329/592

6−17「貴族じゃないんだってば!」








 信じられない言葉は、信じられない人間の口から飛び出した。



 


「ミリア~! あたし~!

 サヤン・トランテにいきたいのぉ!」

「さ、サヤン・トランテ!? サヤン・トランテって言った!?」



 

 高級オートクチュール・アビーネの店内。

 エリックが女性店員と貴族モードで接するのを視界の隅に、ミリアは動揺で言葉を繰り返した。

 

 






 

 ミリアが動揺するのも無理はない。





 『サヤン・トランテ』。

 恋人同士・または男女二人のペアでしか入店を許されない高級レストランだ。



 『ドレスコードはお二人で』が原則であり、例えいくら金を詰もうが『おひとり様』では入れない。三人でもNG。四人組なら、二手に分かれるのがルールだ。

 


 貴族が会食や祝い事で使う、さらに上流の『エーデル・レストランテ』とはまた違い、カップル専門に突出しているレストランをそう呼び、根強い人気を誇っている。


 

 近年、婚姻率並びにカップル率も降下の一途を辿っているが、『そこに入りたいがために相手を捕まえる者たち』のおかげで経営が成り立っているようである。

 



 ──そんな

『カップル専用ペアレストラン』に。


『男嫌いのカリーナが』『入りたい!』とは

 


(──こ、子ども用のコルセットに男のひとが入るぐらい無理じゃない……!?)



 


 と、決して口には出せない失言を飲み込むミリアの前で、カリーナはその瞳に輝きを乗せて言うのである。



 


「────そ~の『チョコヴェル・プレッツェル』! サヤン・トランテでしか食べられないのよ~……!」

「……あ、ああ、えーと?」

 

「サヤン・トランテでしか! 食べられないの!」

「そ、それはわかったんだけど!

 でもあの、『サヤン・トランテ』って、カップル専門のところでしょ?」

「そ~う!」

「………………」


(…………それ言われても困るし……)


 



 形だけは頷きながらぎゅっと黙った。



 



 ミリア・リリ・マキシマム。

 恋人いない歴24年。

 

 生粋の『シルクメイル産の服オタク』のミリアに、そんなことを言われてもどうしようもない。




(……遠い異次元の話をされても困るんだけど……?)


 

 と、ぐったりげっそり力を抜くミリアに、しかしカリーナは止まらない。ミリアの両肘を掴み、わっさわっさと上半身を揺らしながら訴えるのだ。

  


「ミリアぁ〜、あたし、食べに行きたいの〜」

「……え、あ、ちょっとまって。

 ……『恋人が欲しい』ってこと? 男のひときらいだよね?」


「嫌いよぉ~! でもチョコヴェル・プレッツェルは食べてみたいの〜……!」

「でも、食べるのには恋人必須……なんだよね?」

「そうなのぉ~!」


 

「…………んー…………」


 

 

 言われ。

 考える。



(……これは、今……

 『行きたいよねー!』を言うべき?

 それとも、解決策を提示するべき……??)



 と、虚空に選択を浮かべたミリアは、




 『思いつく可能な解決策』を提示すべく


 

 すっ……と指さし、


 


 

「………………エリックさん、使う?

 たぶんそういうの得意だと思う……

 貸そっか?」




 道具感覚で言い放った。

 仮にも彼はこの国の盟主でありトップモデルなのだが、知らぬというのは恐ろしい。



 オリオン家のものが聞いていたら、顔面を(くれない)に染めて斬りかかってきてもおかしくない提案が飛び出したが、しかしカリーナの表情は芳しくない。




「────あのね? ミリアぁ~」



 


 カリーナは、『わかってないわね』を醸し出し、がしっと肩を持ち、ハニーブラウンの瞳を覗き込むと、

 



「──外見のいい男は~ぁ。


 遠くで見てこそ

 価・値・が・あ・る・のぉ~。


 近くに行くのは

 イ・ヤ・な・のぉ~!」


「…………な、なるほど〜……」




 力強く堂々と言われ、ミリアは表層だけで相槌を打った。ぶっちゃけ『いい加減にしろ』である。






(カリーナ……それは……

 ワガママというやつでは……

 せっかく提案したのに……

 

 …………な、なんだかなぁ、もぉ~……)





 自分以上にマイワールドを繰り広げるカリーナに、ぐったりとした疲労感を抱えつつ呟いた。




 

 ああ、今にでも壁に寄りかかりたい。  

 地味に疲れる。

 みるみる気力が減っていくのがわかる。

 


 カリーナという人間が苦手というわけでは無い。『接客以外で、ノースブルクの民を偽りながら、それらしく交流を続ける』のは、普段の倍以上、気も頭も使うのだ。 

 

 


 そもそもここには、ボアとショールの値段の件と、エリックという新人スタッフの紹介としてやってきたのである。


 それが終わった現在、もうここに用はない。





(────はやくかえりたい)



  


 ────しかし。

 

「ねえねえ! なんとか考えてぇっ!?

 あたしチョコヴェル・プレッツェルは食べたいの!」

「そ、そー言われても……!」

 


「じゃ~あミリア♡ 

 あのエリックとかいう男と一緒に行って、テイクアウトしてきてぇ~♡」


「いやいや、だって貴族さま御用達並みの金額取るところじゃん……!

 そんなの無理に決まってる……! あのひと、貴族でもなければ恋人でもないんだよ……!?」


 

 

 無理難題に首を振る。

 ちらちら気を配りながら首を振る。

 『聞こえたらどうしよう』を抑えつつ首を振る。



 しっかしカリーナはしつこいのだ。

 両手を口元に当てて、ミリアに詰め寄り口を開く。



 

「うぅんっ! だってさっき『得意そう』って言ったじゃな~い?」

「…………それは『カリーナが行くならたぶんやってくれるよ』って話で……! わたしが行くのは違うじゃん……!」


「あたし、男嫌いなの。いいじゃなぁ~い。顔はいいんだしぃ~」

「顔はいいけど貴族じゃないんだってば……!

 わたしもお金ないし……!」

「奢って貰えばいいでしょぉ~?」

「そーじゃない、そーじゃなくて!」

 

 

 ひそひそアセアセ。 

 切羽詰まったミリアは、次の瞬間、

 ”すぅっ”と息を吸い込むと──


 


「────だから」

 ────ぴしぴしぴしぃっ!





「あの人、お金持ってないから無理だよっ!」

「…………ん?」


 


 精一杯潜めた声に力を入れて。

 叫ぶように言ったそれに、遠くから声がした。


 

 視界の隅で動いた黒い髪。向けられた視線に気がついて、ミリアとカリーナが”ばっ!”と目を向けた先。

 


「──ミリア? 何? 呼んだ?」

「ううううん、呼んでない呼んでない! 

 お話中ですので! お話をお楽しみください!」


 

 貴族モードのまま、にこやかな笑顔で首を傾げるエリックに、ミリアは高速で首と手を振り、カリーナは勢いよくミリアの後ろに入り込む。

 


 

 エリックから見れば明らかに挙動不審だろうが、彼は気に留めなかったようだ。ミリアの返答に小首を傾げた彼は、すぐさま目の前の女性店員に視線を戻し話し始める。


 

 

 そんな様子に、ミリアが”ほっ”と胸を撫でおろした時────……



 

 

「────くっ……、くぅ……!

 きゅう~~~~~~~~~~っ……!」



(────”く、きゅう”?)





 何かを。


 我慢したような声に 一瞬。


 脳みそが止まる。



 理解の追いつかないミリアの背中に『服をぎゅっと引っ張る力』を感じつつ


 彼女はおそるおそると振り向いて────




「…………え。あの……

 かり──……な……?」


「────ひ、ひきょうよっ!

 あのおとこ、あたしを、あたしを落すつもりよっ! なによあいつ! いくらあたしが可愛いからって、きゅう……っ! きゅうんっ……!」


 

(───”きゅ、うん”?)

 耳まで真っ赤にしながら怒るカリーナに、脳が追い付かない。




 

 視線の先


 肩越しに飛び込んできたカリーナは



 眉も釣りあがっているし、

 服は皺になるほど握っているし、

 思いっきりこちらを盾にしているが、



 その顔は──どう見ても『気持ち悪いと嫌悪している顔』ではない。


 

 

(────か、かり────な……?)



 思わず目を点にして呆けるミリアを置いてけぼりに、当のカリーナはというと大興奮(乱)である。


 

 ミリアの肩をぎゅうぎゅう握りながら、耳元で、鼻息も荒く、


  

「確かにあたしは特別な女だけど! そうはいかないんだから!! なによ、あの流し目ずるいわよっ!? ねえ、エリックさんって言ったかしら!? ねえミリア!?」



「……えりっく・まーてぃん……サン」

「ヤダヤダ(けが)れる、もう! 見ないでよっ! しっしっ! 見ないでって伝えておいてくれる!?」




「……えりっくさん……、もうこっちみてないけど……」

「ああっ! おぞましいっ! おぞましいったら、もう! エリックってばズルい! ずるいわ! ずるいぃ!

 …………もぉん! キュウっ~~~!!」


 

「──────………………ウン…………」



 

 『まったく』

 『これっぽっちも』

 『ミリ単位も』



 

 整合性の取れていないカリーナに


 ミリアは

 

 顔のパーツすべてを殺した。

 



 

 そして、思考停止の脳ががっくりと呟くのだ。




 『今までの愚痴はなんだったのか……?』と。




 

(───カリーナ────

 ねえ、男嫌いって嘘だよね……?

 ほんとは大好きだよね……?

 こじらせてる系……?

 こじらせてる系だよね……?)




 まるで何かと交信するかのように虚空を見つめ、虚無を放つ。


 


(…………”きゅうん”なんて

 口に出してる人初めて見た……

 あれって

 恋愛小説や

 娯楽の擬音だけだと思った……)


 

 

 心の中に広がる、表現しがたい疲労感と悟りを開いたような感覚に、表情からなにから全てを────



 

 のっぺりとまっさらにする。





(────よのなかって ひろいよね、うん。

 ひとって、いろいろだよね、うん)


 

 完全なる現実逃避の中。

 明後日の方向──アビーネの豪華な天井を見上げながら。




 悟りを開くミリアの脳に、ふと



 『我に返る話題』が舞い降りて、



 ミリアは素早く目を見開き────




「……そういえばカリーナ。

 さっき『ちょうど良かった』って言ってたけど……、あれってなんだったの?」


 

 さらりと問いかける。




 必殺『すりかえ流してしまえ作戦』である。

 すっかり忘れてしまっていたが、カリーナは開口一番『調度良かった』と駆け寄ってきたのだ。ここで舞い降りた『話題』を使わずして、いつ使うというのだろうか。



 ミリアの問いかけに、カリーナは”ぴたん”と両手の指の先を合わせると、

 


 

「そうそう! 忘れるところだったわ♡

 『あれ』手に入ったわよ♡」

「『あれ』って?」


「んもう~♡ あれはあれよぉ♡

 ミリア、行きたがってたじゃなぁ~い♡」

「………………………………」



 『ふふっ♡』と笑うカリーナの顔を見つめながら、ミリアは思考をめぐらせて────

 

 

 

(──────あっ。)



 

 思いついたそれ(・・)に、瞳が輝いた。




 ────瞬間。


 心が躍る。

 全身の血が巡り、心臓が早まるのを感じる。




(────え……)


 小さく小さく呟いて、

 彼女は食い気味に距離を詰めると、

 

 

「…………マジで!? ほんとに!?」

「ん♡」


 

 躊躇いのない肯定に、ミリアの中。

 興奮が駆け巡り────……!  


 

(…………うそ……! 信じられない……!)

「カリーナ……! ありがとう愛してるっ!」

「きゃ!

 ……もう、ミリア、抱きついちゃダメよ〜♡

 ここ、フロントよ〜?」


「ごめんごめん、だって……!」


 

 言われ、ミリアは細やかにフルフルと首を振った。


 両掌は自然と口元を抑え、肩に、全身に力が入り、言葉にならない。

 

 


 そんな彼女に、カリーナは

 胸元から『ぺらり』とそれを出して、囁くのである。


 

 

「──楽しんできてね♡

 『カルミア祭 オリビア&リック』のパレード♡」



 






 











 

 

「────…………はあ~……疲れたあ……」



 九月の初頭。

 ウエストエッジ・高級店街。

 アルタモーダ地区『サン・タレア通り』。

 オートクチュール・アビーネを後にして、しばらく。


 

 軒を並べる高級店を通り過ぎながら、ミリアは大きく息を付いた。

 げっそりとくたびれた様子の彼女に、不思議な顔をするのはエリックだ。

 


 彼はアビーネでの様子を思い浮かべつつ首をかしげると、

 


「疲れた? ずいぶん楽しそうに話していたと感じたけど?」

「イイデスカ、おにーさん。いろいろね? あるの。

 気もね? 使うの。

 同業他社じゃん? いろいろあるの」


 

 間髪入れずに戻ってくる返事。

 『あのね? 聞いてくれる?』と言わんばかりに小首をかしげ、綺麗に手のひらを(くう)に向ける彼女は、きちんと中指と薬指を着けて述べる。


 


 そのしぐさに、しみじみ(染みついているんだな)と『マジェラの教育』を実感するエリックは、そのまま、素直な疑問を口に出した。




「カノジョは友達じゃないのか?」

「……カリーナ? ……うーん……”友達”……?

 『仕事関係の知り合い』……かな?」


 

 ミリアは唸りながら首を捻った。

 どうやら『友達』というには懐疑的なようだ。

 


「ん~。

 変わってる人。嫌いじゃないよ。

 でも、仕事関係だから。

 あくまでも『ビスティー』として話してるよ〜

 疲れたよ〜……」



「へえ。それは意外だな。仲が良さそうに見えたけど」

「うん。仲悪くないと思う。

 悪くはないと思うけど『友達』と言われるとどうなのかな……?」



 言いながら、宙を仰ぐ彼女の横顔は少々困っている。

 

 

「──社会人になるとさ、そういうの難しくない?

 ほら、わたしマジェラ(あっち)からきてるし。

 わからない話も多いから、距離感うまく掴めなくて」



「……うん」

「友達っていうより”同業者の知り合い”……? になるのかな。プライベートのことはあんまり知らないんだよね、お互い。

 でもお互い『言ったこと』はよく覚えてて、次の時に『そういえばアレあったよ』とか言ってこう……そうする、みたいな?」

「……ふうん?」




「大切な人脈です。

 あっちがどう思ってるかはわからないけど、人脈は大切じゃん?」

「まあそうだな?

 人脈はあって損する物じゃない」



「でも、『色々』がバレない程度に。

 深入りしない程度に、ね?」

「──フ! 解ってるじゃないか」




 言いながら肩をすくめるミリアに、エリックは吹き出した。

 


 二人、肩を並べて()くサン・タレア通りは、外歩き用のドレスに身を包んだ婦人や、高級スーツに身を包んだ紳士が行き交っている。




 慣れない人間なら、場所に萎縮していたかもしれないが────二人はあまり気にならなかった。

 


 

 背景の『高級』を背負いながら、ミリアはいつもの調子ではちみつ色の目を向けると、

 



 

「おにーさんもあんまり『深入り』好きじゃないよね〜。この前の結婚の話といい、なんかそう思った」



「……まあな? あまり詮索されたりするのは好きじゃないよ。

 わかっているかもしれないけど」


 

「────ふふ、”ドライ”って言われない?」

「ああ、よく言われる」

「一緒であります」


「……そう?

 そうは感じないけど。

 でもまあ、それなら相性はいいのかな。俺たち」

「かもしれない〜」


 

 目配せしながらクスッと笑いあった。

 穏やかな雰囲気が作り出すのは、次の話題だ。

 ミリアは歩きながら問いかける。


 

「そっちは何聞いてたの? 楽しそうだったじゃん」

「──うん? ……楽しそうに見えたのか。

 まあ、別に嫌ではなかったよ」


 

 少しばかり覗き込むように目を向けるミリアに、アイコンタクトと共に応えるエリック。




 彼としては、あそこでのやりとりは別にそれほど『楽しい』わけではなかったが、『単騎特攻のアビーネ』に比べたら段違いだったのは言うまでもない。

 


 それを思い出しながら、穏やかに頷くと、

 



「……君が一緒だと、こうも反応が違うのかと実感していただけ。空気がまるで違うから、驚いた」

「そんなに違った?」



「ああ、段違いだ。君の効果は絶大だと思った」

「そっか。盛り上がってたもんね。楽しそうだった」



「……店員とのこと? いや、別に。

 情報収集をしていただけだよ」

「連絡先とか? 好きなものとか?」



「……まあ、聞いたけど。



 ……うん?

 人をなんだと思っているんだ?

 別に、口説こうと思って聞いたわけじゃないからな?」




「……いやあのそんなこと言ってないけど……」

 



 流れるように困り顔でそう言われ、ミリアも困惑のトーンで返した。

  


 ミリアはただの『話の相槌として聞いた』のだが

 エリックはそれを穿(うが)って捉えたのだ。



 若干食い気味の相槌(しつもん)は、『まるでミリアがそこに対して興味津々』だと取られても不思議は無かった。





 ────しかし。そんな取り違えは、時に、妙な沈黙を作るのである。


 


(…………うん?

 ナンパ野郎だと思われているのか……?)

 ミリアの食い気味の質問に、悪い方向で困惑しざわつくエリックと





(なんで今口説くとかそういう話になったん……? どうしてそうなったん?)

 ただ、疑問符を飛ばすミリア。




 

(女性を見たら口説く男だと思われている……!?)

(……あれ? 今わたし『手が早い』とか言いましたっけ……??)



(ヘンリーじゃあるまいし、いや、でもな……)


(あるぇ……? 言ってなくない……?

 あれ……? 言ったっけ……??

 まあ、女慣れしてるな~とは思うけど……??)



  

『………………』

『………………』

 



 『ただの情報収集をしている自分』を俯瞰的に想像し

 訝しげに沈黙するエリックと


 『相槌代わりの質問』が

 あらぬ誤解を招いていることに気づかないミリアの


 


 微妙に気まずい沈黙が 歩く二人を支配して────……

 



「……繰り返すけど。

 口説いていたわけじゃないからな? 情報収集(・・・・)だ」

「────うん。わかっている」



 

 念を押すエリックに、ミリアは二つ返事で頷いた。

 ミリアとしてみれば、『どうして念を押されたのかさっぱりわからない』が────



 

(力強く言うんだから、まあそーなんでしょう。) 

「まあ『とにかく』。『ですから』ね~?」




 

 びっみょうな沈黙を、素早く散らすように。 

 ミリアは、指先を綺麗に伸ばすと、”はぁ〜〜”と困ったように肩を落として話を振るのである。


 

 

「わたしは疲れたのでございます。

 疲れた~、疲れたヨ~……」

「…………なら、軽く茶でも飲もうか。

 ──……サン・タレア(この辺り)はなかなかいい店が揃って」

「あ……!」



 エリックの言葉を遮って、ミリアは、思わず小さく声を漏らして足を止めた。




 壁に貼られた『モデル・マスケッタ オリビア&リックの、新作ポスター』を目にして。










         #エルミリ


来週定期休み

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ