6- 「 悪役令嬢を探せ! 」
…………順を追って話すか。
あの日、俺はいつものようにビスティーに訪れたんだ。毛皮の調査のために、ミリアとは友好な関係を築いていかねばならないし、服飾ギルドの異変を探ることが、依頼解決の糸口になると考えていたからだ。
しかし、訪ねた工房に……ミリアはいなかった。
その日は彼女の出勤日で、中抜けの時間でもなかったから、おかしいと踏んだ俺は、『ミリアはどうしたのか』と尋ねたんだけど…………居たのが、また、あの二人だけだったんだ。
縫製妖精で工房の縫製職人・ピィとハニー。二度目だというのにパニックを起こしたあの子たちからなんとか事情を聴いたところ、今日は朝から来てないというじゃないか。
彼女の異変に気付いた俺は、彼女を探し回って、とある本屋にたどり着いた。
『あの子なら忽然と消えたよ』と店主から聞いたときは、血の気が引いた。
今度こそ何かあったのだと考え、とにかく目撃情報をもとに、彼女が消えた場所の本を片っ端から開いていったんだ。
そして、……とある一冊にたどり着いた俺は、飲み込まれてしまった。
────突如現れた光の中に。
そこからは必死だったよ。『彼女もこうして消えたに違いない』と踏んだ俺は、奇妙な世界で彼女を探して回った。
────『結果』? 見つけたよ、もちろん。
彼女が花園で求婚されている真っ最中に・な。
…………ったく、誰だジェレマイヤって。
バトラム? 名前を聞いたこともない小貴族が、なにしてくれてるんだ。
ミリアもミリアだ。
はっきり断れるくせに、なんで言わないんだ。
いつもの勢いはどうしたんだよ。
…………と、その時のことはあまり覚えていないけど、無事彼女を救い出した俺に、ミリアはいつも通りで。そこも少し肩透かしだったんだけど、安心もした。
そして彼女は言うんだ。
『悪役令嬢をさがなさきゃ!』って。
ミリアが言うのだから、何か理由があるのだろう。
なあ、悪役令嬢さん。
居るかいないかもわからない存在だが、早く出てきてくれないか?
俺は毛皮の調査で忙しいんだけど。
『エルミリ 副業盟主とコメディ女』
番外編
『悪役令嬢を探せ』
200045年 4月から
…………?
え? ああ……、少し落ちていたか?
人前で居眠りなんて、気が抜けているな、……どうかしてる。
……なあミリア
「悪役令嬢」って……知ってる?
※連載予定はありません




