5-18「暗雲」(5P)
『素敵ですね、とても似合っている』
それに頬を赤らめるベルオーブの娘は
『……嬉しいですわ、今宵のために作らせましたの』と はにかむ。
しかし、エルヴィスは知っている。
そのドレスを、コサージュを、誰が作り縫い付け拵えたのか。
透かして見える。
『それを丁寧に縫い上げた 相棒の真剣な顔』。
「…………」
それらを胸にエルヴィスは、ぐるりとホールを見回した。
感覚ではわかっていた。
想像はしていた。
けれど、今はもっとよく、わかる。
関わったからこそ、鮮明に視える。
華やかな舞踏会。
色とりどりのドレス・タキシード・料理や飲み物。
ここにある──いや、
世の中すべての物の、向こう側に
────”携わっている人が居る”と。
その日の舞踏会は
彼にとって
今までと違うものになった。
(────くそっ……!)
靴音すら鳴らしながら、焦りを抑えて走り抜けるは裏街道。
夢見が悪かった
胸騒ぎがする
もうあんな思いはしたくない
なぜあんな夢を見たのかわからない
どうしてそこに、彼女が混じったのかわからない
視野も狭く、ただ目指すのはビスティーだ。
焦る、焦る
『夢は夢だ』『夢は夢であってくれ』と、切に願いながら。
息を切らし
よぎる悪夢を振り切るように
言葉は、不思議だ。
誰にいつ
どのような影響を与えるかわからない
狙った言葉が響かないこともある
想像以上に、心を震わせることもある
何気ないひとことが
何かを動かすこともある
その一言は
平静・冷静を望む心を激しく揺さぶった。
「ミリアが……いなくなった!?」
────これは、嘘を重ねる男の話。
この番組は
ノースブルク諸侯同盟と
ネミリア聖協会
マジェラ魔導教育委員会
の提供で
お送りいたします
▶▶次回
「エルミリ 盟主は手綱を握りたい」は
4/17(月) 21:00 ドロップ!
chapter6-1 「皮肉」
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