5-9「しょうぶをしかけてきた!」
まどうし ミリアが
しょうぶを しかけてきた!
「ふふふ!
まどうし の ちから みせてあげる!
いけ! ウォルタ!」
しゅるしゅる! ひゅーん!
「────もう始まってるのか!?」
シャッ!
エリックは よこに おおきく とびのいた!
ミリアの ウォルタは あたらなかった!
「ほらほら、もういっちょ いくよ!」
ミリアのこうげき!
「さあウォルタ! アローでこうげきっ!」
──しゅん!
みずの ゆみやが とんできた!
ジャッ!
エリックは おおきく うしろにとびのいた!
「…………!」
エリックは こうげきを ためらっている!
ミリアの こうげき!
「ねえー、なにやってるの?
使わなきゃ上手にならないよー?」
「……いや、ちょ!」
エリックは困っている!!
ミリアの こうげき!
「エレメンツ チェンジ!
いけっ! ウィンド!」
しゅるるるるるるるるるる!
風が てのひらに あつまっていく──!
「────いっけ~っ!
エアーーーぼぉーーーるっ!」
ミリアの えあーぼーる!
ひゅおーん!
エリックの えいしょう!
「────くっ……!
力をよこせ、ノー……!」
──────ぶっ。 わあああああああああああああ!
「──────っ!」
えいしょうは まにあわなかった!
エリックの おでこが まるみえになった!
エリックの目に 砂が 入った!
エリックに 2のダメージ!
こうかは いまひとつ のようだ!
(……痛ぅっ……! 目にゴミが!)
「ねえ~? 使ってみたいんだよね?」
ミリアの といかけ!
「…………!」
エリックはためらっている!
ミリアの こうげき!
「────言っとくけど!
一発当てなきゃ終わんないからねっ!」
「──はっ!? いや、ちょっとま」
「問答無用っ! いっくよーっ?
────重ね掛け!」
(──パイラップ?! なんだ!?)
エリックは 慌てている!
ミリアの コール!
「エレメンツ ウォルタ!
エレメンツ ライト!」
なんと! 水流が 光を 纏って輝きだした!
ミリアの こうげき!
「スターーーー・ウォルタリングーーーー!」
なんと! ミリアは魔法陣を描き出した!
水流は 光を 纏って 陣を成していく!
──エリックは動揺している!
「ハーイ・ぷれっしょおおおおおん!」
ミリアは 両手で 魔法陣を押し出した!
────どっ! パッ!
ミリアが腕を押し出すと同時、魔法陣の中心から放たれた光の水柱が、エリックに向かって空を裂く!
ずあああああああああああ!
と激しい水音を立てながら、ぐるぐると渦巻き迫る水柱に、エリックはたまらずカードを引き抜いて────!
「────力をよこせ!
エレメンツ ノーム! タイプ……っ
────ウォール!」
────途 端。
頭の中に流れ込む『基礎構築式定型文』と
呼応し盛り上がる土の壁に
エリックは思わず目を見開いて────
────どっ!
ばしゃざああああああっ!
ビヂヂヂヂヂ! ヂヂヂヂヂ!
──はっ……!
途切れた『基礎構築式定型文』と、現れてくれた土の壁に、我に返って息を付く。
壁の向こうから聞こえる音が、水流の強さを物語り
エリックは短く息を付きながら壁に背を預け奥歯を噛み締めた。
(危ないところだった……!
『加減』って言葉を知らないのか……!?)
呟く彼の頭の中で、『目の当たりにした水流』が容赦なく蘇る。
頭の中を支配した『基礎構築式定型文』にも驚いたが、今はそれどころではない。
空気を裂きながらまっすぐ、うねりを伴い襲い掛かってきたソレ。
瞬間的に感じる『命の危険』。
初心者に向ける『みずのこうげき』というレベルではなかった。
(──あんなの喰らったら、どうなっていたかわからない……!)
──と、背を預けた土壁の向こうに神経を尖らせながら呼吸を逃がし、
(……ああ、くそ!
今までの経験がまるで役に立たない……!)
完全に舌を巻く。
戦術・体術・剣術・槍術・計略……
幼き頃から叩き込まれたそれらを繰り出す前に『やられる』のがわかる。
(────死ぬってことはないんだろうけど……!)
呟き張り巡らせるのは神経。
壁の向こう、聞こえるは水の音。
土が飛び散る音はしない。
『それだけ』をくみ取りながら、エリックは唇を噛みしめつつ、思考を巡らせる。
(……とっさのこと、とはいえ
視界を遮るほど高い壁を作ったのは悪手だったな……!
これでは、あちらの様子がわからない……!)
と、整理しながら腰ベルトにしまわれたカードをちらり。
わからないなりにも、使えることは出来た。
呼応することはわかったし、使った時の感覚も分かった。
──しかし
ミリアの攻撃を避けつつ
これらを素早く引き出しながら『使う』ことが
──果たして、自分にできるのかどうか────
それらを想定し、頬に一筋、たらりと汗を流しつつ
(───どうなってる?)と、静かになり始めた向こう側に、神経を研ぎ澄ませた、その瞬間。
──────……ぽ。
わっ……
「…………?」
突如。
上から。
ほわほわと浮かび、落ちてくる────光の玉。
「…………?」
それに一瞬気を取られ、目を見開いた彼が
「────!」
それの正体を理解した、その、瞬間!
「────”ACT” 爆ぜろ!」
────カッ!
「────ッ!」
響くミリアの高々とした声!
弾ける光にエリックは素早く腕を上げ目を閉じた!
頭の上でバチバチギラギラと感じる光。
文字通り、光源を直接叩き込まれて目が開けられない!
(────目くらまし……!
まるで挑発だな……!
情けないけど、まるで動けない……!)
と、内心苦々しく呟いた、その時。
”声”は かるーい口調で 壁の端から飛んできた。
「ほらほらぁ、壁作って安心してる場合じゃないよ?」
「────君……!
俺、初めてなんだけど?」
壁からひょっこりと顔を出したミリアに、エリックは、眩しさを堪えた苦笑いを向ける。
しかしミリアは
余裕しゃくしゃくという足取りで
ゆっくりと距離をとりながら
くるり、ふわりとスカートをなびかせ、”にぃ~っと”笑うのだ。
「習うより慣れろってね~♪
さあ、おいでよ♡
加減要らないから かもーん♡」
”くいくいっ”と 煽る笑顔は、悪戯と余裕を孕んでいて
(────……君って人は……!)
──彼の『闘志』に火をつけた。
そしてエリックは
挑発的な笑みを湛え──
ベストを脱ぎ、放り投げたのであった。
#エルミリ




