4-12「夢と現実」(1P)
彼女は語る。
賑やかに食事を囲む人々を背景に
「────でもさあ
”ここなら綺麗にしてくれる!”って
思って来てくれるお客様の期待には、応えたいじゃない?」
嬉しそうに、頬杖をつきながら
疲れた顔に光を宿して
「『盟主さまの目に留まりたい』って。
『あの方の瞳に入りたい』って。
この街の女性だって、別に『相手が要らないわけじゃない』と思う」
そんな
キラキラしたミリアに
彼が 返した言葉は 鉛色
「…………どれだけの人間が………
……『エルヴィス・ディン・オリオン』を見ているのか、疑問ではあるけど」
「? どゆこと?」
「────いや、なんでも?」
最後の呟きは 口の中
切り替えたように顔を上げ
ごまかしさえ掃き捨てて
問いかける”彼”は、話題をミリアに向ける。
「……それで? 君は?
毎日ドレスにも触れて、着せているんだろ?」
「わたしは、着せる側じゃん?
ドレス一着いくらすると思ってるの?
婚礼の贈り物って言われてるのに。
貴族令嬢でもないわたしが、着れるわけないでしょ〜?」
返す彼女は
『なにを当たり前な』と言わんばかりで
それを考えたこともなさそうだった。
しかし、彼女は笑う
今ある幸せを、噛み締めるように
「…………でもね、いーの。
毎日服を選ぶだけで楽しいんだよ?
そんなの、ここに来るまで知らなかったっ」
「…………………………」
その
『 何も望まない 』と言わんばかりの返答に
────彼は
思わず、投げかけていた。
「…………着てみたいとは、思わないのか?」
「…………着てみたいとは、思わないのか?」
「……?」
それは、修羅場の中のオアシス。
ウエストエッジ・飲食街の一画。
人で賑わう『ビストロ・ポロネーズ』の店内で
食事を共にしている男性『エリック・マーティン』にそう聞かれ、ミリア・リリ・マキシマムは小さく目を見開いた。
彼女のハニーブラウンの瞳が捉えるのは
エリックの暗く青い瞳。
その眼差しがどことなく真剣で──
ミリアは、そのまま
顎を乗せていた手のひらの指を、緩やかに握り『うん?』と眉を上げると




