4-11「むしてたべる」(5P)
計算も何もない『思いついたまま』の話題だった。
「…………それにしても。
仕事。すごい量だったな?
毎回ああなのか?」
「……ん〜〜〜。
まあ、そうかな?
でも、開催まで期間が長ければ、そのぶん、分散するから余裕できるんだけど。
今回お知らせ来た時点で2週間ないんだもん、
みんな焦って持ち込んだ感じー」
「……舞踏会ひとつでああなるとは
……想像が及ばなかったよ」
「んまあ、男の人ならしょーがないんじゃん?
おにーさん、貴族でもなんでもないんだし。
普通普通。そんなもんだよ~」
投げかけられた言葉に、軽く返す。
もちろん、彼の言葉の内に『強い反省』があるのにも気がつかない。
微妙な顔つきをする彼に
ミリアは前のめりでテーブルに両腕を付けると、ニコニコと話しかけた。
「まあ、大体リメイクなんだけどね?
リメイクはね?
ドレス作るよりは手間もなくて割高で、儲けられるから『らっきー!』って感じなんだけど。
何しろ数が多くて。片付けても片付けても増えてくんだもん。
ひと昔前ならお直しできるショップもいっぱいあったんだけど、今はもう『作りっぱなし』のところが多いじゃない?
ウチみたいに『他で購入したものも直しますよ』なんてところ、すごーく少ないのねー?
だから、溢れちゃうの」
はぁ、と短く漏らす息。
そして彼女は肩をすくめ、
「スタッフ総動員。
わたしも縫う。
猫の手も借りたい。
うちの職人は血眼」
「…………」
「今回は、流石のうちもオーダーストップした。
こんなの初めて」
「…………」
「ふふーん? その顔。
『なら最初から受けるな』とか
『キャパを考えろ』って言いたそうだね〜?
────でもさあ、」
なにか、”言葉を飲み込んだ様子”のエリックに
ミリアはスプーンを置いて笑いながら手のひらで頬杖をつくと
その
はちみつを閉じ込めたような瞳に、光を宿しながら 述べるのだ。




