4-11「むしてたべる」(2P)
盛大な勘違いではあるが、
妙に鮮明に思い浮かんでしまった映像に、
(──────、)
彼は
一瞬
いろいろ
考えて
(…………いや。
そんなことで、引いてどうする。
別に、食の好みなんて様々じゃないか。
彼女は彼女だろう。
虫を食べる民族や国があるのは前から知っていたわけで、彼女がそうだからと言って、ここで付き合い方を変えるのは)
「──なんでそんな顔するの?」
「────え」
自覚なしの険しい顔で考え込む最中、
声をかけられ目を上げれば、そこにあるのはミリアのキョトンとした顔。
エリックは、即座に
誤魔化すように首を振り、浮かべるのは愛想笑いだ。
「…………あぁ、いや、別に?
『へぇ』って思っただけ」
「こっちはしないから?
場所違うし、そういうのあるよね〜
あっち、揚げもの無いもん。
こっちにきて初めて食べたの。揚げたやつ」
「え。
『こっちに来て』、『初めて』……!?
そっちには揚げ物がないのか……!?」
「ないです。
鳥の唐揚げとか、革命的美味しさでございました……! しばらくハマって太りました……!」
「…………信じられない。
あんなに美味いものがないなんて……!」
「ね。あれ知らないなんて、人生の4割ぐらい損してるよね〜」
「ああ、損をしているな。
君はここに来て、4割得したわけだな?」
「そういうことになります♪」
流れるような会話の中。
目の前の男に『虫を食べる女』だと誤解されているとは露知らず。
ミリアは陽気に、クリームを纏ったキノコをぱくり。
ご機嫌な彼女に、エリックは
黒く青い瞳を瞼の中で惑わせながら
問い
かける
「…………なあ、さっきの」
「さっきの?」
「……あぁ、えーと、”ぷりん”? ってやつ」
「ぷりん?」
「そう。その、甘くてぷるんとした、”ぷりん”。
あー…… その、
虫じゃなくて、他の方法で作れないのか?」
「? なんで?」
「…………」
きょとんと聞かれて言葉に迷う。
エリックは、言いにくそうに頭を垂れながら
ちらりちらりと視線を送りつつ、思いを、吐いた。




