4-11「むしてたべる」(1P)
暮らす場所・育つ場所が違えば、もちろん。
使うものや道具にも差が出るものである。
食事中、ミリアが出した『プリン』の話。
どうにも通じないそれを確認するため、彼女は聞いた。
「────ねえ、もしかして
ここって、『蒸し料理』がない……?」
「………………ムシ、料理…………?
ミリアの問いかけに、『信じられない』というニュアンスで呟いたのは盟主・エルヴィス・ディン・オリオンだ。
彼は完全に誤解している。
彼女の言う『蒸し料理』は『蒸す』という調理法のことであり、『虫料理』ではない。
しかし、彼の認識の中で『蒸し』は『虫』であった。
エリックは、
気まずさの中にも、
気遣いを残したような顔をして、言う。
「……そんなの、初めて聞いた、かな。
…………あー、
…………そっちでは、よく、
その、
……食べ、るのか……?」
「けっこう。よく。
蒸して食べる」
「…………”虫て食べる”…………」
ケロッと言われて、さらに内心ドン引くエルヴィス・ディン・オリオン。
昆虫を食べる民族がいるのは知っていたのだが──
まさか目の前の彼女がそうだとは。
別に、それが異常だとかどうとか言うつもりはないが
彼の脳内に浮かぶのは、昆虫を嬉々として食べるミリアの顔。
その大人しそうな外見で
『虫おいしー!』と、何かを頬張る彼女の顔だ。




