4-10「プリンは伸びない」(6P)
『ぷるぷるした食べ物』が存在しないのだ。
基本的に、どんな素材もよく加熱するのが普通であり、いわゆる生食のようなものを食べる習慣がない。
ローストした肉も魚も
ボイルした野菜も
中までよく火を通し、ホクホク・かりっとした状態でいただくのが主流で、生肉など考えられたものではなかった。
主な加熱調理法は
『焼く・煮る・茹でる・揚げる・燻す』の5手法で、それはスイーツも同じこと。
パイやパンケーキ・クッキーなどの焼き菓子と
ドーナッツやチップスなどの揚げた菓子が代表的で
サクッと、よく焼き、火を通し
紅茶やコーヒーと共にいただく。
そんな国で育った彼にとって
ミリアの言う『ぷるぷる』『とろとろ』は、よくわからなかった。
(…………”とろとろ”……
クリームスープのとろみ? それとも、肉の脂のことか?)
「ん。あのね?
口の中に入れると、とろーんって無くなる。
カラメルが苦いの」
「『カラメル』…………?
甘いの? 苦いの? どっち?」
「甘い部分と、苦い部分がある。
苦いのが入ってないプリンもある。
けど、大体入ってるかな。
とにかく、”ぷるーん、とろーん”て。
あまーい。」
「…………?
……ホイップクリームに、近いのか?
あれも、口に入れると溶けるよな?」
「?」
言われ、今度はミリアが首を傾げた。




