4-10「プリンは伸びない」(4P)
「……ここは、酪農が盛んだからな。
ミルクやチーズもそうだけど、スイーツも美味いよ。
ホイップクリームが乗ったパンケーキとか
クリームを添えたフルーツだとか。
食べたことある?」
「…………ない〜。
それって高級店で食べられるやつでしょ?
……あるわけないよね〜」
「……そうか。
霊峰ニルヘイムの氷を使ってホイップしたクリームなんだけど。
口に入れた瞬間、甘みが広がり溶けて美味いんだ。
……今度、食べに行こうか。ご馳走するよ」
「いやいや、いいよいいよ。
ごちそうなんてさ。フェアにいこ。
お給料入ったらにしよ。
なるべく安めのとこにしよーね、お互い大変だし」
エリックのナチュラルな誘いを、ミリアは手をぱたぱたしながら断った。
彼女の中(『ピュ・チーボ』の串焼き、『どこの鳥』とか言ってたし。お屋敷勤めってそんなに儲からないんだろうな)という配慮の元の発言である。
全く見当違いの配慮なのだが、ミリアはいまだにエリックを『お金のないお兄さん』だと思って疑わなかった。
そんな勘違いをされているとは思わないエリックが正面で、なにやら小さく笑みを浮かべる中
ミリアはまた、クリーム色のスープを一口。
水で洗い流した口の中、何度でも広がるクリーム煮の旨味に、頬を抑える。
(……んんんん……!
ここのクリーム煮、ほんとうにおいしい……!)
『この美味しさを外に出してはなるものか』と
唇をぎゅっとつぐみ、口いっぱいの旨味を味わう彼女はふと
それに気が付き、エリックに目を向けると、




